「最近の動画広告って、短くなっているんですか?」打ち合わせで、よくこう聞かれます。SNSでも「動画は短いほどいい」という声をよく見かけます。
私自身もずっと気になっていたので、2025年と2026年の1月〜10月に配信量の多かった動画広告を、同じ取り方で約500本ずつ集めて比べてみました。
(この記事の「当たった」は、配信量が多かったという意味です。売上や成果までは分かりません)

去年と今年の比較の表

先に3行でまとめると

  • 動画広告は短くなっていませんでした。長さの真ん中の値は38秒から55秒に伸び、60秒を超える広告は1割から4割近くに増えています
  • 話す速さは1秒あたり約6.5文字でほぼ同じ。早口になったのではなく、台本が約280文字から約370文字に増えていました
  • タップした先は「記事の形のページ」が4割弱から6割に。LINE登録やアンケートのページは半分以下に減っています

動画広告は短くなっていなかった

いちばん意外だったのは、長さです。

長さの割合のグラフ
  • 15秒以内の広告は、去年は1割強ありましたが、今年はわずか3%ほどでした
  • いちばん多い長さは、去年は31〜45秒、今年は46〜60秒。1段階長くなっています
  • 61秒以上の広告は、去年は1割ほどでしたが、今年は4割近くになりました
長さの比較

長くなったのに、話す速さは変わっていません。1秒あたりの文字数は、去年が約6.6文字、今年が約6.5文字です。つまり、早口で詰め込んだのではなく、伝える中身そのものが増えています。商品の説明、安い理由、口コミ、期限など、申し込む前の不安に1つずつ答える台本が増えた、と見ています。

タップした先のページも変わった

タップした先のページのグラフ
  • 記事の形のページにつなぐ広告は、39%から62%に増えました。漫画で読ませる記事のページも、6%から12%に倍増しています
  • 反対に、LINE登録のページは13%から5%、アンケートのページは13%から6%に減りました

動画を長くして説明し、その先の記事のページでもう一度しっかり読んでもらう。動画と記事の両方で納得してもらう作りが、この1年で主流になったように見えます。

増えた言葉、減った言葉

台本のある広告に、どんな言葉が出てくるかも数えました。

台本の言葉のグラフ
  • 「今なら」「先着」のような期限の言葉は28%から39%に、「実は」「本当は」は21%から33%に増えました
  • 「口コミ」「みんな」など、ほかの人の声を伝える言葉は16%から27%に。「医師」「先生」「監修」も8%から15%と、2倍近くになっています
  • 反対に減ったのは「あなた」です。10%から7%に下がりました

「あなた」と呼びかけるより、「みんなが使っている」「専門家が勧めている」と、ほかの人の声で信頼を作る広告が増えた、と言えそうです。ただし、言葉の多い少ないは、次に書く業種の入れ替わりの影響も受けています。

業種の顔ぶれも入れ替わった

業種の上位

去年の上位は、医療痩身、クレンジング、スキンケアなど、美容の広告が中心でした。今年は、クリニック、医薬品、育毛剤、投資講座が上位に並んでいます。説明することが多い業種が増えたことも、広告が長くなった理由の1つだと考えています。

長くなった広告を最後まで見てもらう、編集のコツ

広告が長くなると、編集の腕がそのまま「最後まで見てもらえるか」に出ます。2026年10月に、業種ごとに配信量が1位だった25本の動画を見て、編集の工夫を5つ拾いました。

1. 場面は約3秒で切り替える

カットの数を数えられた17本では、1つの場面の長さの真ん中の値が約3秒でした。いちばん速かったのは宅食サービスの広告で、49秒で40カット、平均1.2秒で切り替えています。会話もナレーションもなく、小さな文字と速いテンポだけで、仕事帰りの夜の生活を見せていました。

宅食サービスの1位の場面(ぼかし)

2. 1カットで撮るなら、文字の色で強弱をつける

残りの8本は、カメラ1台の長回しや、画面を固定した作りでした。92秒をほぼ1カットで撮った女性向けの育毛剤の広告は、1人で聞き役と答え役を演じ、質問は青、答えはオレンジと、テロップの色で役を分けています。音を消していても会話だとわかる工夫です。

育毛剤の1位の場面(ぼかし)

3. 値段や題名は、画面に固定しておく

AGAクリニックの広告は、画面を3段に分け、真ん中に価格の入ったバナーを46秒ずっと置いていました。3分32秒のAI講座の広告も、上に題名、下に「40、50代必見」を固定しています。長い広告ほど、途中から見た人にも「何の広告で、誰向けか」を伝え続けることが大切です。

AGAクリニックの1位の場面(ぼかし)

4. 疑いは先に口に出す

「お得すぎて怪しくない?」「そんなに無料で何が目的なんですか?」と、見る人が思う疑いを出演者が先に言ってしまう広告が、いくつもの業種で1位を取っていました。黒い画面に縦書きでこのひと言を入れて、流れを一度止める編集も見られました。

5. 申し込みの画面を見せておく

クレンジングの広告は、申し込みのアンケート画面をそのまま映していました。タップした後に何をするのかが先にわかると、長い広告の最後でも迷わずに行動できます。

私たちも撮影や編集で、この5つをいつも意識しています。

11月6日から毎日12時に、Xで「業界別・先月の1位」を分解します

この記事で紹介した編集のコツは、業界ごとの1位の広告を1本ずつ見て拾いました。Xでは11月6日から毎日12時に、1本を6つの場面に分けて、訴求と構成、編集のコツを1枚の画像にまとめて投稿します。よければのぞいてみてください。

データはいつものDProで

今回のデータも、動画広告分析Pro(DPro)で集めました。去年と今年を同じ条件で並べられるので、比べるのがとても楽です。
外にいる時は、スマホのDPro Liteで今日の上位をめくっています。気づけばホーム画面に2つ入っていて、夜はお酒を片手にずっと眺めています。

ホーム画面のDPro Lite

調べ方

  • 対象:日本の獲得目的・縦長の動画広告。2025年と2026年の1月〜10月を2か月ずつに区切り、各期間で累計の配信量が多かった上位100本を集めました(2025年は500本、2026年は別の目的の1本を除いて499本)
  • どちらも2026年10月28日時点の累計の配信量で並べています。公開から日がたっている去年の広告ほど、配信量が積み上がりやすい点には注意が必要です
  • 言葉の割合は、台本の文字起こしがある広告(2025年411本、2026年465本)が分母です
  • 編集の数字は、2026年10月の30日間でジャンルごとに配信量1位だった25本の動画を、機械で場面の切り替わりを数えたものです。長回しや画面を固定した8本は、目で見て確かめました
  • カードの画像は上位の広告の一場面で、広告主や人物が分からないようぼかしています
  • 配信量は「どれだけ配信されたか」の目安で、売上や成果を示すものではありません

この記事を書いた人

樋口 慧(株式会社BUZZ MEET)
ショート動画広告の企画・撮影・編集・運用を担当。納品した広告動画は1,000本以上・100社以上、提携演者は1,600名以上。

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