フリーランスの契約書の作り方・書き方|個人事業主が契約する流れや注意点
- フリーランス名鑑編集部
- 記事制作日2021年07月22日
- 更新日2021年11月26日
「フリーランスになったら契約書は書かないといけないの?」
「フリーランスとして結ぶ契約書の書き方がわからない」
フリーランスを目指す方は、契約書に関することが気になりますよね。
結論から言うと、フリーランスになると業務委託契約を締結することが必要になり、契約書も自分で作成しなければなりません。
しかし、契約書の書き方にはコツがあり、ポイントを踏まえておくと比較的簡単に作成できます。
この記事ではフリーランスの契約書について、以下のポイントを解説していきます。
・9つの必要項目と注意点
・フリーランスが契約書を交わすメリット
この記事を読むと、フリーランス・個人事業主における契約書の役割がわかり、契約書を作成する際のポイントもわかるでしょう。
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また、フリーランスになるにはどのような流れになるか、必要な手順が知りたい方は「フリーランスになるには?始め方や必要な手続き、事前準備など」をぜひ参考にしてください。
フリーランスの契約書とは?
フリーランスの契約書とは、フリーランスとクライアント(依頼人・顧客)が業務委託契約を結ぶ際の決まりごとを明記した書類のことです。契約書に明記する決まりごとには、業務内容や秘密保持に関する規定などがあり、後で詳しく説明します。
注意点として、契約書は必ず作成しなければならないわけではなく、口約束だけでも契約は成立します。しかし、口約束だけだと「言った言わない」のトラブルが発生する恐れがあるため、証拠書類として契約書が作成されます。
フリーランスの契約書の作り方・書き方|9つの必要項目と注意点
フリーランスの契約書の作り方・書き方については、明確なルールや決まり事はありません。しかし、将来のトラブルに備えるためには、契約書に以下の9つの必要項目を記載することが大切になってきます。
それでは、フリーランスの契約書に記載する9つの必要項目について詳しく見ていきましょう。
委任契約か請負契約か
フリーランスとクライアントは業務委託契約を締結しますが、業務委託契約は「委任契約」と「請負契約」の2つの形態があります。そのため、フリーランスの契約書には委任契約か請負契約のどちらであるかを明記することが必要です。
なお、委任契約と請負契約の違いは以下の通りです。
委任契約
委任契約を締結すると、フリーランスはクライアントの求めに応じて業務を遂行することが必要になります。フリーランスはプロとして要求される注意義務(善管注意義務)を果たすことが必要ですが、作業の完成責任はありません。
委任契約ではフリーランスに成果物の納品義務はなく、成果物が完成しなくても契約違反にはなりません。つまり、クライアントの求めに応じてプロとして作業をすれば良く、もし、成果物が完成しなくても責任は問われないわけです。
民法第643条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
請負契約
請負契約を締結すると、フリーランスは期日までにクライアントが求める成果物を完成させて納品することが必要になります。例えば、ホームページの作成を請け負った場合だと、期日までにホームページを完成させて納品することが求められます。
委任契約では成果物が完成しなくても責任は問われませんが、請負契約では期日までに成果物を納品することが必要です。そのため、委任契約と請負契約とを比べると、請負契約の方がフリーランスの責任は重くなります。
請負の意義(民法第632条)
請負は,役務そのものと区別される仕事の成果に対して対価が支払われる契
約類型であるとされており,仕事が物と結合していないものも請負に含まれて
いるとされ,目的物の引渡しを要しない類型の請負を想定した規定(民法第6
33条ただし書,第637条第2項)が設けられている。
業務内容、範囲
フリーランスの契約書には、業務内容と業務範囲を明記することが必要です。例えば、ホームページの作成を依頼された場合だと、ホームページの作成が業務内容になり、システム開発を依頼された場合は、システム開発が業務内容になります。
業務範囲については、どこまでが業務の範囲であるかを明確に決めておくことが必要です。例えば、ホームページの作成の場合だと、ホームページを作成するだけで良いのか、作成後の更新作業などを含めるのかを明確にして契約書に記載します。
報酬金額
フリーランスの契約書には料金や報酬金額を記載することが必要です。料金や報酬はフリーランスの生活の糧になる大切なものなので、後々のトラブルを避けるためにも、契約書にきちんと明記しておきましょう。
料金や報酬金額を契約書に記載する際は、消費税や源泉徴収税額などの税金に関する取り扱いをはっきりさせておくことが大切です。例えば、「請負金額110万円、税抜価格100万円」や「源泉徴収税¥◯◯◯を報酬振込時に差し引く」などと契約書に明記しておきます。
着手金
フリーランスが業務を開始する前に、クライアントから着手金を受け取る場合は、着手金の金額を契約書に記載することが必要です。着手金は報酬の一部になるので、契約書に記載しておかないとフリーランスが残りの報酬を受け取る際にトラブルの原因になります。
着手金に関しては、契約がキャンセルになった場合の取り扱いをどうするのかが、特に大事になってきます。契約がキャンセルになった場合は、着手金を全額返金するのか、一部の返金で良いのかなどを契約書に明記しておきます。
契約期間、納期
フリーランスの契約書には、契約期間・納期を記載することが必要です。フリーランスが仕事をする際には、納期は報酬や成果物の品質と並ぶ重要事項であり、請負契約の場合だと納期は必須項目になります。
納期は厳守しなければなりませんが、家庭の事情などでやむを得ず納期が遅れてしまうことがあります。そのような事態に備えて、納期が遅延した場合の取り決めなども記載しておきましょう。それと、納品後のクライアントの検収期限なども記載しておくと安心です。
キャンセル料
フリーランスの契約書には、キャンセル料に関することも明記しておきましょう。キャンセル料を明記しておかないと、仕事をキャンセルした時にクライアントから損害賠償請求をされることがあります。
特に最近はコロナウイルス感染症による緊急事態宣言の発令で外出ができず、やむを得ず仕事をキャンセルするケースが増えています。このような事態に備えるためにも、キャンセル料についてはさまざまなケースを想定して契約書に明記しておきましょう。
支払い方法(支払いサイト、振込手数料)
報酬の支払い方法や支払い時期については、フリーランスの契約書にしっかり明記しておきましょう。報酬の支払い方法や時期を明確にしておかないと、大規模なシステム開発を請け負った場合などでは資金不足に陥ることがあります。
一般的にフリーランスの業務では、「月末締め・翌月末払い」にすることが多いです。この支払サイト(入金サイクル)が短いほどフリーランスにとっては助かるので、クライアントと話し合って決めましょう。なお、振込手数料についても、どちらが負担するのかを決めておきます。
秘密保持契約
秘密保持条項についても、フリーランスの契約書に記載することが必要です。フリーランスの業務では、依頼者や顧客の個人情報を取り扱うことが多いので、個人情報保護の観点からも秘密保持条項が制定されます。
秘密保持条項については、契約終了後の取り決めが重要になってきます。契約終了後も過剰な義務が課されると、フリーランスにとっては仕事がやりにくくなる場合があるので、個人情報保護法の規定に基づき、常識の範疇で秘密保持に関する事項を決めましょう。
成果物の権利、著作権
成果物の権利や著作権の帰属などに関する事項も、フリーランスの契約書に明記することが必要です。特にフリーライターやフリーイラストレーター、フリーランス作曲家などは、著作権の帰属をはっきりさせておくことが重要になってきます。
成果物の納品後、著作権がクライアントに移転する場合だと、フリーランスは同じ作品を他の目的に使用することが禁止されます。納品後も著作権は移転しないと定めることも可能なので、クライアントと話し合ったうえで決めましょう。
フリーランスが契約書を交わす流れ
フリーランスがクライアントと契約書を交わす流れは、フリーランスの業務内容などによって異なります。ここでは、一般的によくあるフリーランスが契約書を交わす流れについて見ていきましょう。
受注側が見積書を出す
ホームページの制作やシステム開発などの業務では、はじめに、仕事を受注するフリーランスが見積書を作成します。見積書には作業工程ごとに費用を記載し、最終的にどの程度の費用がかかるのかを明示して発注を促します。
多くの場合、フリーランスに仕事を依頼するクライアントは、ホームページやSNSのアカウントなどでフリーランスの存在を知り、電話やメールで連絡をします。連絡を受け取ったフリーランスはクライアントと相談のうえ、見積書を作成するという流れになります。
見積書は無料で作成することが多く、クライアントは見積書の内容を確認し、見積書の内容に納得できれば契約に進みます。なお、複数のフリーランスに相見積もりを依頼したうえで、最も条件が良い見積書を提出したフリーランスと契約を締結するケースも多いです。
契約内容の交渉、双方の合意
見積書がフリーランスからクライアントに提出されると、次は見積書をたたき台にして、契約内容の交渉が行われます。見積書に記載されている作業内容や費用などは決定事項ではなく、交渉によって変更されることがあります。
交渉して条件をすり合わせることでお互いが納得できれば業務委託契約を締結し、契約書の作成に進みます。口約束だけでも業務委託契約は成立しますが、将来のトラブルに備えて契約書を交わすケースがほとんどです。
受注側が契約書を作成
契約が成立すると、受注側のフリーランスが契約書を作成するという流れになります。契約書を作成する際は、先に説明した9つの必要項目を漏れなく記載し、双方が合意した内容を書面にします。
契約書を作成するのは結構難しいので、雛形をいくつか用意しておくとスムーズに作成できます。しかし実際には、発注者側のクライアントが契約書を提示するケースも多く、その場合はフリーランスが契約書を作成する必要はありません。
発注側が内容を確認し契約締結
フリーランスが契約書を作成すると、発注側のクライアントが内容を確認し、問題がなければ双方が署名捺印をして交付します。クライアントが契約書を作成する場合は、受注側のフリーランスが内容を確認し、問題がなければ署名捺印して契約書を受領します。
契約書は重要書類なので、紛失しないように注意して大切に保管します。なお、契約書の保管期間は税法で7年間と決められているため、最低でも7年間は保管することが必要です。
フリーランスが契約書を交わすメリット|契約書なしだとトラブル発生リスクも
口約束だけでも契約は成立しますが、契約書を交わすことによって、フリーランスとクライアントの双方がさまざまなメリットを得られます。では次に、フリーランスが契約書を交わすことのメリットを見ていきましょう。
トラブル防止になる
契約書を交わしておくと、将来のトラブル防止につながることが最大のメリットです。口約束だけでは、将来的にトラブルが発生するリスクがあります。契約書は実際に取引が行われたことの証拠書類になるため、以下のようなトラブルの発生を未然に防げます。
トラブル①納品物のアウトプットイメージの違い
フリーランスの契約書を交わさないと、納品物のアウトプットイメージの違いでトラブルに発展することがあります。クライアントが要望していたものと実際に納品された成果物のイメージが異なると、報酬の支払いを拒絶されることにもなりかねません。
このような事態を避けるためには、契約の段階でしっかりと話し合っておき、話し合いで決めた事項を契約書に明記しておくことが必要です。フリーランスにとってあまりにも不利になるような場合は契約を断ることも検討しましょう。
トラブル②不当な度重なる修正依頼
契約書を交わさないと、不当な度重なる修正依頼をされる場合があります。何度も修正依頼をされた挙げ句に、報酬の支払いを拒絶されることもあるので、修正依頼の回数などは事前に決めておくことが大切です。
例えば、契約書に「修正の回数は1回とする」と明記しておくと、2回以上の修正依頼をされることはなくなります。修正依頼の回数は契約を締結する前にしっかりと話し合っておき、契約書には取り決めた内容を必ず記載しておきましょう。
トラブル③報酬未払い
フリーランスとクライアントが契約書を交わさないと、報酬未払いのトラブルが発生する場合があります。成果物を完成させて納期までに納品しても、報酬を支払ってもらえないリスクを防げます。
万一、大きな金額の報酬未払いがあった場合は、最終的には裁判で決着をつけることになりますが、管轄裁判所が遠方だと大変な手間がかかります。管轄裁判所をどこにするのかは契約の段階で決められるので、しっかりと話し合ったうえで契約書に明記しておきましょう。
トラブル④納期の認識違い
契約書を交わさないと、納期の認識違いによるトラブルが起こることがあります。口約束だけで契約を締結すると、約束よりも早く納品することを要求される恐れがあり、その場合に抗弁できなくなってしまいます。
特に請負契約では納期は重要事項になるので、納期をはっきりと決めておき、契約書に記載しておくことが大切です。「納期は2021年7月31日迄とする」というように契約書に明記しておくと、納期の認識違いを未然に防げます。
なお業務内容や条件について、クライアント間のトラブルなどに関して相談先が欲しい方は「フリーランスのトラブルの相談先は?「フリーランス・トラブル110番」など相談窓口を紹介」をぜひ参考にしてください。
信頼感が増す
フリーランスとクライアントが契約書を交わすと、契約書を交わすこと自体が、しっかりした法令遵守の意識があることのアピールになります。契約書を交わしておくと、フリーランスとクライアントの双方が法令遵守の意識が高まり、信頼感の向上にもつながります。
ビジネスでは双方が契約を遵守することが必要であり、そのためには契約書の交付が欠かせません。契約書はフリーランスとクライアントの間を取り持つ役割を果たし、フリーランスとクライアントの双方にメリットがあります。
フリーランスの契約書のテンプレート・雛形
フリーランスが契約書を作成する際には、契約書のテンプレート・雛形をたたき台にすると良いでしょう。契約書を作成するには民法や商法などの法律の専門知識が必要になりますが、契約書のテンプレート・雛形を利用すると、比較的簡単に契約書を作成できます。
フリーランスの契約書のテンプレート・雛形にはさまざまな種類があるため、自分のビジネスに合っているものを選ぶことが必要です。以下の「bizocean」のサイトを利用すると、いろいろな種類の契約書のテンプレート・雛形を無料でダウンロードできます。
フリーランスの契約書に関するよくある質問
契約書の締結は義務?
契約書の締結は義務ではありません。よって、契約書を交付しなくても口約束だけで契約は成立します。しかしこれまで説明してきたように、契約書を作成しておくと将来におけるトラブルの回避など、さまざまなメリットが得られます。
契約書を作成するのが面倒だと感じるフリーランスがいますが、契約書を作成しないことのデメリットの方が大きいです。クライアントから不当な要求をされないようにするためにも、契約書の作成は不可欠です。
印鑑は必須?
契約書の作成時に印鑑は必須であり、認印ではなく印鑑登録をしている登録印(実印)の方がふさわしいです。なお、契約書を交付する際はページの差し替えなどの不正行為を防ぐため、「割印」や「契印」をすることも必要になります。
また最近は紙の契約書ではなく、コンピュータを使用した電子契約書を交付するケースが増えています。電子契約書には印鑑を押印することが物理的に不可能なので、押印に代えて電子署名をすることになります。
フリーランスで契約書以外にも独立関連の知識をつけたい方は?
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