近年DXが話題になり社内にAIを導入している企業も少なくありません。しかし、具体的にどのような場面でどのようにAIが役に立っているのかはいまいちイメージしきれない人も多いかと思います。
今回は、AI開発のプロフェッショナルとして活躍している小山内美悠さんにAI活用事例や独自の強みを伺ってきました。

(インタビュアー:StockSunサロン運営事務局 垣尾亮汰

略歴


東京でAIを使ったシステム開発受託事業を営んでおります小山内です。
2008年に東京大学理科一類に現役合格、大学院には進学せずITベンチャーに就職。
JavaやPHPを使ったシステム開発を行いながら、2016年頃からDeepLearningを使った機械学習に取り組み始める。
現在は機械学習(AI)を使ったシステム開発PJのPM/システムアーキテクトを務めております。

AIとはそもそも何か?

垣尾:
最近「AIの活用」といった言葉を耳にすることが多くなってきたのですが、そもそもAIとはどのようなものでしょうか?

小山内:
AIとは、人間の五感に近いような認識ができるようになったコンピュータのプログラムだと考えています。

日常で使われている例としては、
・画像に人間が含まれているかどうかを正しく判別する
・ニュース記事のカテゴリーが何に当てはまるのかを判断する
などがあります。

前者はすぐにイメージできる思うので、後者について詳しく説明しますね。

AI導入以前は、スポーツ選手名のワードが入っていればそれだけでその記事のジャンルは「スポーツ」に振り分けられるなどしていました。しかしこれでは、選手の結婚ニュースなども全てスポーツジャンルに割り振られてしまいます。
AIを導入することで、前後の文脈などから内容を判別し、その記事のジャンルを「エンタメ」と正しく認識することができるようになります。

企業でのAI活用事例

垣尾:
なるほど!
しかしここまで聞いただけだとAIが企業内でどう役立つのかというイメージがあまり持てないのですが、企業向けの業務に活かす場合AIはどのように貢献しているのでしょうか?

小山内:
大きく2つあって、1つは社内の業務を効率化すること。もう1つはユーザー体験の価値向上に役立っています。

それぞれ事例を紹介しますね。

①社内の業務効率化

事例①求人サイトの記入ミス検知
求人情報サイトで雇用形態などを企業側が入力する際、条件のチェックボックスを間違えて入稿していることがあります。
このような事態を防ぐため、フリーテキスト欄に入力された文字と条件のチェックボックスに相違がないかを判断するプログラムを作りました。

例えば、土日休みの求人なのに、「土日休み」のチェックボックスにチェックを入れ忘れている求人があるとしましょう。このとき、通常であれば求職者が「土日休み」で条件を絞ってもその求人は表示されないことになってしまいます。しかし、AIを導入することで、フリーテキスト欄に「土日休み」に関連するワードが無いかをAIが察知し、企業側にチェックボックスの入力ミスがないかを促すことができます。

事例②スマホアプリのプッシュ配信自動化
アプリのプッシュ配信はユーザーに送りすぎると嫌われてしまうため、適した相手に適したタイミングで送る必要があります。
そのため、今までは過去の配信経歴や相手の属性などを手作業で確認しプッシュ配信を行っていたこともあり、施策に比例して人件費もかかっていました。
そこで、各ユーザーに合わせたプッシュ配信をリスティングするという機械学習のアルゴリズムを導入しました。

事例③木材加工会社での不良品検知
木材加工会社では、ベルトコンベアの上にカメラを載せて、木材を切った後で割れたり穴が空いたりしていないかを判別するシステムを作りました。
これも今までは手作業で確認していたのですが、システムを導入したことにより業務の効率化につながりました。

以上のようなものが業務効率化にAIが役立った事例となります。

ユーザー体験の価値向上

垣尾:
分かりました。UXの改善でいうと、どのような事例がありますか?

小山内:
やはり代表的なのはレコメンド機能ですね。

複数サービスを展開している大企業でレコメンド機能のAI導入を行った際は、事業内容や社内データヒアリングから始まり、関連性のあるサービスのリストアップを経て開発を行いました。
結果社内のサービス利用歴を横断的に判断して、ユーザーに最適なレコメンド出すことができ、UX改善につながりました。

垣尾:
なるほど。
聞いている限り、中小企業からの依頼は多くないのでしょうか?

小山内:
AI事業のスタートアップからの依頼を請けて開発した経験はありますが、中小企業は少ないですね。
中小企業や病院・ECサイトなら、AIを利用するまでもなく、リスティング広告などのマーケティング施策で十分成果を上げられるかと思います。

AI開発の費用は、データの有無がポイント

垣尾:
AI開発システムの導入には、どれくらいの費用がかかるものなのでしょうか?

小山内:
ざっくり100万~数千万円くらいですね。
かなり幅ができてしまうのですが、データを既に用意しているかどうかが費用を大きく左右します。

WEB系の企業なら既に使える状態のデータがストックされているので、コストは抑えられるかと思います。
データがストックされているのであれば、AIの実装はすぐに行えるので100~200万円程度で実装することが可能です。

一方で、データはなくてもAIを使いたいというクライアントもいます。
データがない場合は、データを集めるためのツール作りから始まることもあり、費用が膨らみがちです。
実際に、バイク屋の修理をしている会社でクレームを減らすために修理前と修理後の変化を判別するシステムを開発して欲しいという依頼がありました。
しかし、これには機械学習のために修理前と修理後の写真を数千枚以上集める必要があり、その準備で費用がかさんでしまいました。

一人ひとりのエンジニアが一気通貫して開発できるのが強み

垣尾:
ありがとうございます。
それでは他のAIのコンサル会社や開発会社との差別化ポイントはありますか?

小山内:
結論、弊社のエンジニアは一人で実装までの工程を全て対応できるというのが強みです。
このため、他社より費用を抑えることができます。

弊社にはAIのみを担当するというエンジニアはいません。
他の企業だと、AIの専門・データサイエンティストの専門・バックエンドエンジニアの専門…など分業しているのですが、我々は一人で全て行えるように社員への教育を実施しています。
なぜかというと、AIのアルゴリズムはツールが整っていてば実装自体は難しくないからです。

一般的にAIを導入する際には、以下3点が大変なポイントとなります。
・会社のデータを集めて加工する
・AIの判定結果の精度を測るツールを作る
・ユーザーがアルゴリズムを使えるように社内のシステムと結合させる
これをそれぞれの専門家が担当しようとすると、複数のエンジニアが必要になり、その分費用もかかってしまいます。

そのため、以上3点を一気通貫でできる人が一人で担当するほうが工数がかからず、費用も抑えられるというわけです。

垣尾:
ありがとうございます!
最後に依頼を検討している企業へのメッセージなどはありますか?

小山内:
「21世紀はデータの時代」と言われているように、今後は他社と自社の差別化をどう図るかということが重要な時代になっていきます。
今後、企業が差別化を図りたいと考えたときの投資対象としてデータの活用を選択しても、データを扱う専門家が社内にいないという場合もあるでしょう。
そのときに我々が力添えできると思うので、ぜひご相談ください!


垣尾:
本日はありがとうございました!