障害者の働き方を考える時、よく勧められるのが就労移行支援や就労継続支援A型・B型です。
ですが、転職したい人、一般就労でキャリアを作りたい人、将来的に独立したい人にとって、このルートが本当に最適かといえば、そこはかなり慎重に考えるべきです。

厚生労働省の整理でも、就労移行支援は「一般企業に雇用されることが可能と見込まれる人」向け、A型・B型は「一般企業での雇用が困難な人」向けの制度です。
つまり、制度そのものが最初から“一般就労に乗る人”と“福祉的就労に留まる人”を分ける構造になっています。
厚生労働省:障害者の就労支援対策の状況

もちろん、体調や障害特性によっては、これらの制度が必要な人もいます。
しかし、もしあなたが「もっと稼ぎたい」「転職したい」「スキルをつけて外で勝負したい」「独立も視野に入れている」のであれば、就労移行支援やA型・B型を安易に選ぶことは、人生の選択肢を狭める可能性があります。

この記事では、制度批判を感情論で終わらせず、構造の問題として整理します。


本文

厚生労働省が定義している時点で、A型・B型は「一般就労が難しい人向け」である

まず押さえておきたいのは、制度の建て付けです。

厚生労働省は、就労系障害福祉サービスを次のように整理しています。

  • 就労移行支援
    一般企業に雇用されることが可能と見込まれる人に、就労に必要な知識・能力向上の訓練を行う
  • 就労継続支援A型
    一般企業での雇用は困難だが、雇用契約に基づく就労は可能な人向け
  • 就労継続支援B型
    一般企業での雇用も、雇用契約に基づく就労も難しい人向け
    厚生労働省:障害者の就労支援対策の状況

つまり、A型・B型は最初から「一般就労に乗る前提ではない」制度です。
ここが重要です。

もし本人が本気で転職やキャリア形成、さらには独立まで考えているなら、A型・B型に入ること自体が、
「自分は一般就労ではなく福祉的就労の側に行く」
という選択になりやすいのです。


就労移行支援も、キャリア形成の場というより「制度内訓練」で終わる危険がある

就労移行支援はA型・B型より一般就労に近い制度です。
実際、厚生労働省でも、一般企業への就職を目指す人向けの訓練とされています。

また、atGPの解説でも、就労移行支援は履歴書、面接、PCスキル、職場体験など、就職に向けた訓練が中心で、利用期間は原則2年以内と整理されています。

一見すると良さそうです。
ただ問題は、ここでも本人の時間が「支援サービスの利用者」という立場のまま消費されやすいことです。

本来、転職や独立を目指す人に必要なのは、

  • 実務経験
  • 収入に直結するスキル
  • 市場の中で評価される実績
  • 営業力
  • 自分の強みの言語化

です。

ところが、就労移行支援で積み上がるものは、事業所によっては
“就職支援を受けた経験”で止まることがあります。

制度内では頑張っていても、市場に出た瞬間に通用する武器がない。
これでは、キャリアの再建ではなく、ただ時間を使っただけになりかねません。


atGPが紹介する数字を見ても、B型は「生活を作る制度」ではなく「低工賃構造」に近い

atGPの記事では、就労継続支援A型は雇用契約があり、B型は雇用契約がないと説明されています。
さらに同記事では、2019年度実績として、A型の平均月額賃金を78,950円、B型の平均工賃を16,369円と紹介しています。
(同記事は厚生労働省統計を踏まえた解説です)

ここで現実を見た方がいいです。

月1万円台の工賃では、生活は作れません。
年100万円前後どころか、それ以下の水準に留まりやすい。
これでは自立も転職準備も独立資金づくりも厳しい。

もちろんB型の役割は「高収入を作ること」ではなく、就労機会や居場所の提供にあります。
ですが、転職や独立を目指す人にとっては、その制度目的そのものがズレています。

“今は配慮を受けながら少し働ければいい”人には合っても、
“将来の収入とキャリアを作りたい”人には、必ずしも合わない。
ここを混同してはいけません。


制度には「利用者を囲い込むインセンティブ」がある

就労移行支援の儲かるからくり・仕組み
という記事では、就労移行支援の報酬が、利用人数・利用日数・定着就職者割合などで構成されると解説されています。

要するに、事業所側には少なくとも構造上、

  • 利用者を集めたい
  • 通所日数を確保したい
  • 途中で辞められたくない
  • 就職実績を作りたい

という動機が生まれます。

もちろん、これは制度としての設計であって、すべての事業所が悪質だという意味ではありません。
実際に同記事も、多くの事業所は健全で、悪質な施設は一部と明記しています。
また、令和元年度に指定取消・効力停止処分を受けた就労移行支援事業所は、記事内では約0.2%と紹介されています。
guide-ss.com

ただし重要なのは、
「善意の支援」と「事業所の経営都合」がぶつかりうる構造がある
という点です。

だからこそ、障害者本人が転職や独立を考えるなら、
「支援してくれる場所か」ではなく、
「自分の市場価値を本当に上げる場所か」
で見なければなりません。


「支援されること」が、そのまま「前に進むこと」ではない

ここを誤解すると危険です。

支援制度は、困っている人にとって必要です。
しかし、支援を受けること自体が目的化すると、人は簡単に止まります。

  • 今日も通えた
  • 今日も作業した
  • 今日も支援員と話した
  • 今日も制度の中では頑張った

これらは全部、「行動している感」はあります。
でも、その先に

  • 一般就労で通用する職歴
  • 転職市場で戦えるスキル
  • 独立に必要な営業力や顧客獲得力
  • 自分の名前で稼ぐ力

が積み上がっていなければ、キャリアは進んでいません。

障害者に必要なのは、保護の中で長く留まることではなく、
必要な配慮を受けながらも、できるだけ市場の側に近づくことです。


「福祉ビジネス」という言葉を使いたくなる気持ちは分かる。だが本当に批判すべきは“構造”だ

就労移行支援やA型・B型を見ていると、
「これは福祉ビジネスではないか」
と言いたくなる人がいるのは理解できます。

実際、guide-ss.com でも、悪質な事業所の特徴として、

  • 勧誘がしつこい
  • 辞めさせてくれない
  • 休みがちな利用者に厳しい
  • 障害理解が乏しい
  • 行政処分歴がある

といった点が挙げられています。

ただ、ここで記事を感情論だけにすると弱くなります。
本当に見るべきは、
制度と事業運営の仕組みが、利用者本位より“在籍・通所・実績”を優先しやすい構造になっていないか
です。

つまり、批判すべきは個人の贅沢や噂話ではなく、
「利用者の人生設計」と「事業所の収益構造」がズレる可能性がある制度設計そのもの
です。

この視点で書いた方が、記事としても強いです。


転職や独立を考える障害者が先にやるべきこと

もしあなたが本気で人生を立て直したいなら、先に考えるべきは次のことです。

1. 一般就労ルートを切らない

最初からA型・B型に入ると、「福祉的就労に適した人」として経歴が固定されやすい。
まずは障害者雇用、在宅ワーク、短時間雇用、職種転換など、一般就労ルートを広く見るべきです。

2. スキルを“制度内評価”ではなく“市場評価”で測る

PC、ライティング、デザイン、事務、動画編集、SNS運用、営業補助。
何でもいいですが、
外でお金になるスキルかどうか
で見なければ意味がありません。

3. 独立志向なら「支援」より「実績」を優先する

独立に必要なのは、作業所経験ではなく、

  • 納品実績
  • 顧客対応
  • 小さくても売上
  • 仕事の再現性 です。

4. 事業所を見るなら「優しいか」より「出口があるか」

本当に見るべきなのは、

  • 就職先の実態
  • 定着率
  • 利用者の卒業後の進路
  • 具体的なスキル習得内容
  • 見学時の空気
  • しつこい勧誘の有無 です。

まとめ

就労移行支援やA型・B型は、必要な人にとっては意味のある制度です。
だから制度そのものを乱暴に全否定するのは正確ではありません。

ただし、転職したい人、一般就労で収入を上げたい人、将来的に独立したい人にとっては、安易に入るべき制度でもありません。

厚生労働省の制度設計を見ても、
A型・B型は「一般就労が難しい人向け」です。
厚生労働省

そして、guide-ss.com が指摘するように、事業所には利用者確保や通所維持のインセンティブが働きます。
さらに、atGPの解説 が示す通り、特にB型は低工賃構造で、生活や資産形成、独立準備には向きません。

だからこそ言いたい。
障害者だからといって、最初から福祉の中に収まる前提で進路を決めるべきではない。
支援を受けるにしても、目的は“所属”ではなく“前進”であるべきです。