障害を抱えながら働く中で、フリーランスという選択肢に救われる人がいる

「会社という働き方がどうしても合わない」
「体調の波があり、毎日同じペースで通勤するのが難しい」
「障害への配慮が足りず、職場で力を発揮しにくい」
「組織に属するより、自分の得意を活かして働きたい」

こうした悩みを持つ人にとって、フリーランスという働き方は単なる憧れではなく、現実的な選択肢になることがあります。

もちろん、フリーランスは簡単な道ではありません。
収入の不安定さ、営業の必要性、自己管理の難しさなど、会社員とは違う苦労があります。
それでも、自分の障害特性や体調、生活リズムに合わせて働き方を設計しやすいという点で、障害のある人にとって大きな可能性を持つ働き方でもあります。

実際に、発達障害、精神障害、身体障害、視覚障害、難病など、さまざまな背景を抱えながらも、フリーランスや起業家として活躍している人たちがいます。

この記事では、そうした事例を紹介しながら、
「障害があるから働けない」のではなく、「自分に合う働き方をつくる」という視点を整理していきます。


障害がある人にとって、なぜフリーランスが合うことがあるのか

障害のある人にフリーランスが向く理由は、人によって異なります。
ただ、共通しているのは、働き方を自分で調整できる余地が大きいことです。

たとえば、次のようなメリットがあります。

  • 通勤が難しい場合でも在宅で働きやすい
  • 集中できる時間帯に仕事を組みやすい
  • 対人ストレスを減らせる場合がある
  • 体調や通院に合わせてスケジュールを調整しやすい
  • 得意なことに特化しやすい
  • 苦手な業務を避けて仕事を設計しやすい

一方で、フリーランスは「自由」だけではありません。

  • 収入が安定するまで時間がかかる
  • 仕事を取る力が必要
  • 納期管理や契約管理が必要
  • 相談相手が少なく孤立しやすい

という厳しさもあります。

だからこそ、フリーランスは「誰にでも向いている働き方」ではなく、
自分の特性や強みと噛み合ったときに強い働き方だといえます。


障害を抱えながらフリーランスで活躍する人たちの実例

以下では、ご提示いただいた事例をもとに、障害を抱えながらもフリーランスや起業、個人活動で活躍している人たちを紹介します。


発達障害を抱えながら「属さない働き方」を切り開いた人たち

発達障害のある人の中には、
マルチタスク、時間管理、曖昧な指示、人間関係の空気を読むことなどに強い負担を感じる人もいます。
その一方で、特定分野への集中力、独自の視点、クリエイティブさ、探究心などが強みになることもあります。

そうした特性を活かし、会社に合わせるのではなく、自分に合う働き方を選んだ人たちがいます。

■佐藤銀河(ぎんが)氏
発達障害(ASD・ADHD)の当事者として、会社員の働き方に馴染めず、フリーランスとして独立。その後は連続起業家として複数の会社を立ち上げ、自身の経験をもとに「属さない働き方」を提案している存在として紹介できます。
参考情報として、佐藤仙務 公式サイト では、障害当事者の起業・発信に関する公開情報が確認できます。

■寺島ヒロ氏
発達障害(ASD)を開示しながら、30年以上フリーランスの漫画家・イラストレーターとして活動。長いキャリアそのものが、「継続できる働き方を自分で築く」ことの説得力になっています。

■いしかわ ゆき氏
ADHDの特性から会社員時代に苦労を重ねながらも、独立後は「文章を書く」という得意分野に特化し、ライター・著者として活躍。不得意を無理に補うのではなく、得意を仕事に変える発想を体現しています。

発達障害のある人の働き方では、
「苦手をなくす」より「得意を仕事にする」
という考え方が特に重要です。


精神障害や体調の波と向き合いながら、在宅・個人仕事を続ける人たち

精神障害のある人にとって、フルタイム通勤や対人負荷の高い環境は大きな負担になることがあります。
一方で、在宅中心で、自分のペースを守りやすいフリーランスの働き方が合う場合もあります。

■水野ひなこ氏
統合失調症の通院・投薬治療を続けながら、完全在宅のフリーランスイラストレーターとして活動。未経験からクリエイティブ分野で仕事を得るまでの過程や、障害を抱えながら働く工夫を発信している事例として紹介できます。

■村上英輝氏
うつ病や双極性障害などの精神障害と向き合いながら、就労移行支援をきっかけにライター活動を開始。フリーランスとして自分のペースで仕事量や納期を調整しながら、収入基盤を築いていった例として紹介できます。

精神障害がある場合、
「毎日同じ場所に通い、同じ調子で働く」ことが難しいケースがあります。
だからこそ、働く量・時間・環境を自分で調整できることが、そのまま就労継続の力になることがあります。

なお、障害と仕事に関する一般的な情報としては、LITALICOワークスのコラム でも、精神障害・発達障害・身体障害などと仕事の付き合い方に関する情報がまとめられています。


視覚障害や身体障害があっても、テクノロジーを使って働く人たち

障害によって移動や作業に制限があっても、テクノロジーや在宅ワーク環境を活用することで、フリーランスとして仕事を続けている人もいます。

■おおつか ひろみ氏
視覚障害(全盲)がありながら、スクリーンリーダーや点字ディスプレイなどの支援技術を活用し、Webライター・翻訳家として活動。言葉を扱う仕事と支援技術の相性の良さを示す事例です。

■新井涼氏
脳性麻痺で車いすを利用しながら、Webデザイナー・ITエンジニアとしてリモートワーク中心で活動。移動の壁を、PCスキルで越えている象徴的な存在として紹介できます。

■奈須香織氏
重度身体障害があり、24時間介護が必要な環境でも、在宅で完結できるWebデザインのスキルを身につけ、個人事業から法人化へ進んだ例。働き方そのものを自分の生活に合わせて設計したケースです。

身体障害や視覚障害がある人にとって、
移動を減らせること、オンライン完結しやすいこと、PC一台で仕事ができること
は大きな意味を持ちます。

特に、ライティング、翻訳、デザイン、プログラミング、動画編集、SNS運用などは、障害特性と相性が良い場合があります。


表現や発信を仕事に変えたクリエイターたち

フリーランスの強みは、単なる受託仕事だけではありません。
自分の表現や発信そのものを仕事に変えている人たちもいます。

■星野富弘氏
頸髄損傷により手足の自由を失いながらも、口に筆をくわえて花の絵と詩を描き続けた詩人・画家。組織に属さず、個人の表現力で自立したフリークリエイターの象徴的存在です。

■中嶋涼子氏
下半身不随・車いす利用の立場から、映画ライター、インフルエンサー、タレントとして活動。SNSやメディアを活用し、自分自身の視点や経験を価値に変えています。

■あそどっぐ氏
重度身体障害がありながら、お笑い芸人・YouTuberとして独自の立場を確立。自分の日常や障害をブラックジョークを交えた表現に変え、唯一無二の発信をしています。

ここで重要なのは、
障害そのものを「消す」のではなく、自分の視点や体験を価値に変えている
ということです。


起業という形でスケールさせた人たちもいる

フリーランスから始まり、やがて起業へ進む人もいます。
個人で働くだけでなく、自分の経験や問題意識を事業化するケースです。

■垣内俊哉氏
骨形成不全症の当事者として、「バリアバリュー」を掲げ、ユニバーサルデザインのコンサルティング企業を創業。障害を“弱み”ではなく“新しい価値の起点”に変えた代表例です。

■沢辺芳明氏
頸椎損傷で車いすを利用しながら、フリーランスWebクリエイターを出発点に事業を広げ、大手クリエイティブ企業の創業者へ。スキルとビジョンを掛け合わせて大きな事業を作った例として紹介できます。

このような例を見ると、障害がある人の働き方は、
「就職できるかどうか」だけでなく、
自分で仕事を作る、事業を作る、社会に新しい価値を提案する
ところまで広がっているとわかります。


障害のある人がフリーランスを目指すときに大切なこと

実例を見ると勇気づけられる一方で、
「自分にもすぐできる」と単純化しすぎないことも大切です。

フリーランスを目指すなら、次の視点を持っておくと現実的です。

1. 得意なことを絞る

ライティング、デザイン、イラスト、動画編集、翻訳、Web制作、SNS運用など、まずは「何で仕事を取るか」を明確にする。

2. 働ける条件を把握する

何時間なら集中できるか、通院頻度はどうか、対人負荷はどこまで大丈夫か、納期ストレスにどれくらい耐えられるかなど、自分の条件整理が必要。

3. 生活コストを下げる

独立直後は収入が不安定になりやすいので、固定費を抑えることが重要。

4. 小さく始める

いきなり完全独立ではなく、副業、業務委託、クラウドソーシング、知人経由の案件などから始めるのも有効。

5. 支援機関や周囲とつながる

一人で抱え込まず、就労移行支援、相談支援、家族、支援者、同業コミュニティなど、相談先を持つ。


まとめ|障害があっても「自分に合う働き方」はつくれる

障害があるからといって、働き方の選択肢が一つに決まるわけではありません。
会社員が合う人もいれば、フリーランスや起業という形のほうが力を発揮しやすい人もいます。

今回紹介したように、

  • 発達障害の特性を活かして文章や表現を仕事にする人
  • 精神障害と付き合いながら在宅で仕事を続ける人
  • 身体障害や視覚障害があってもITや支援技術で働く人
  • 自分の経験や視点を発信・表現・事業に変える人

は実際に存在しています。

大切なのは、
「一般的な働き方に無理に合わせる」ことではなく、
自分が続けられる働き方を見つけることです。

フリーランスは楽な道ではありません。
でも、障害がある人にとって、
自分の特性に合わせて働き方を設計できる、非常に有力な選択肢でもあります。


参考リンク