通常インフラの構築というものは、それなりに時間や手間がかかります。
必要な構成を決め、ソフトウェアをインストールし、細かく設定を行い、そこからプラグインのインストールやセキュリティ設定まで含めれば、かなりの工数になるでしょう。

 

もちろん1回きりの構築であれば、『多少時間がかかっても仕方ない』と言うことが出来ますが、しかし日常的にそれらを行っているのであれば、ぜひ検討していただきたい手法があります。
それはIaCという手法です。

 

そもそもIaCとは何か

aCInfrastructure as Code)とは、システムを構成しているサーバやデータベース、ストレージ等の構成をコード化し、管理を行いやすくする手法です。

 

予め書いたコードさえあれば、いつでも同一の環境を用意できます。
今稼働している環境のバージョンを確認したり、すべての手順を1から確認する……といった必要はありません。
IaCならば、そのコードを実行するだけで、全てが一致した環境を揃えられるのです。

 

IaCは『環境構築』だけでなく『運用』でも役に立つ

とは言っても、『環境構築だけならそこまで必要を感じない』と思われるかもしれません。
『そこまで環境構築に時間をかけてない』『プロジェクトによって環境に微調整が必要』といったケースです。

 

しかし、IaCが役立つのは『環境構築』だけではありません

例えば『インフラの変更履歴を辿る』事ができます。IaCを使えばインフラを変更した際、Git等でその履歴を調べることができるので、『いつ誰が環境をいじったのか』についてスムーズに調査が行なえます。

 

また、『以前の環境へすぐロールバックできる』という点も優れています。
”とあるインフラをアップデートしたらエラーがでてしまった”というのはよく起こるトラブルですが、
その際ロールバックを掛けるのは、アップデートを掛けるよりも多くの工数と手間がかかります。物によっては長時間のダウンタイムが必要となるでしょう。
しかしIaCが導入されているのであれば、前のインフラ環境へすぐロールバックすることができるのです。これはリスク管理の面でも非常に有用と言えます。

 

更に、『セキュリティ』にも利点があります。
複数人でやるプロジェクトの場合、皆にインフラの管理権限を与える形になることがありますが、それはセキュリティ上好ましくない状況です。
誰かが悪意ある設定に切り替えるかもしれませんし、悪意がなくとも重大なセキュリティ違反を犯してしまうかもしれません。
しかしIaCを使うのであれば、各ユーザーごとに制御できる範囲を細かく設定し、余計な箇所を触ってしまわないよう管理することが可能です。
また先程述べた通り誰かが設定等を変更した場合、すべて履歴として残るため、何かトラブルが起きても原因の調査が行いやすくなります。

 

IaCを導入した方がいい状況

以上のようなIaCのメリットを踏まえて、IaCを導入した方がいい状況をご紹介します。
ぜひ以下に当てはまるような開発を行っている場合、IaCの導入を検討されてください。

 

環境を複製する回数が多い時

一番IaCが必要とされるケースでしょう。
例えばクライアントごとに環境を構築するようなシステムを販売している場合や、拠点ごとに環境を構築するような業務を行う場合、
もしくは、それぞれの環境において『開発環境』『本番環境』更には『ステージング』や『検証環境』『デモ環境』等、複製を繰り返す場合、
ぜひともIaCの利用を検討してください。

 

もちろん手順書等は細かく用意されていると思いますが、何回も同じ作業を行うのであれば、いちいち手作業でそれらを行うのは時間がもったいない上に、ミスも起こりやすくなるでしょう。
IaCを導入するならば、素早く同一の環境を構築できますし、設定ミス等も防ぐことができます。

 

インフラを資産として管理する時

クラウドサーバやBaaSといったサービスは大変便利ですが、あまりにも多機能なため、それらをうまく使うにはいくつもの知識が求められます。
なので正しく組まれたインフラサービスの組み合わせは、それだけで価値ある資産と言えるでしょう。

 

実際、こういったクラウド関連の設定代行を行ったり、SaaSとしてそれらを提供する企業は増えてきています。
もしあなたがそういったサービスの提供を考えているのであれば、ぜひIaCを導入してください。

これらのサービスを提供する場合、いかにミスなく時間を掛けずに同一の環境を用意できるかが価値を決めます。
非常にIaCと親和性が高い事業と言えるでしょう。

 

システムが複雑化してきた時

たくさんのコンポーネントが絡むような複雑なサービスの場合、それだけでIaCを活用する理由になります。

まず複雑なシステムの場合、環境がどのように構築されているのか、それぞれのサービスがどのような依存関係にあるのか、一目で把握するのは困難なことです。
たとえ自分一人でしか操作しないとしても、開発して時間が経てば、どういった構成で構築を行ったのか思い出すのも大変になるでしょう。
しかしそんな複雑な環境であったとしても、IaCならばコードを見るだけで一目瞭然です。

更に、スケーリングが必要となった際にも、新しいインスタンスの用意や設定をスムーズに行うことが出来ます。
大規模なシステム・複雑なシステムにはぜひIaCを取り入れてください。

 

同一の環境を触るエンジニアが3人以上いる時

そして複数人で開発を行う際も、IaCを利用することでたくさんのメリットを享受できます。

 

まず環境がどのように構築されているのか、それぞれの依存関係を全員で共有するのは、複雑な環境であるほど難しいことです。
こういったケースでは設計書等をしっかりと作りこむことが求められますが、忙しい現場や柔軟な対応が求められるプロジェクトでは、それもままならないことが多いでしょう。
特に、インフラに細かい調整を繰り返すような作業が発生した場合、変更箇所を共有する方も把握する方も混乱しがちです。

 

しかしIaCを使えば、これらの問題はほぼ解決します
今どのようなインフラ構成になっているのか、いつ誰がどの部分に変更を加えたのか、IaCを見るだけで各メンバーはそれらを把握することが出来ます。
もし誰かが加えた変更により別の箇所でトラブルが起こったとしても、すぐに原因調査を行うことが出来ますし、ロールバックも簡単です。

こういったトラブルを防止・解消するためにも、複数人で同じ環境を触る際はぜひIaCを導入しましょう。

 

IaCを導入する上で気をつけるべき点

ここまでIaCを導入した方がいいケースについて考えてきましたが、
『全てにおいてIaCを導入すれば良い』という訳ではありません。

 

念のためIaCがそこまで効果的でないケースについてもご紹介します。

 

シンプル・小規模なインフラ環境

IaCは複雑な環境を構築・保守するのに向いていますが、シンプル・小規模な環境にわざわざIaCをつけるのであれば、返って導入コストが高くついてしまうでしょう。
数分で構築・分析ができるようなインフラであれば、ドキュメントを残しておくだけで十分です。

 

IaCツールがサポートしていないコンポーネントが含まれたシステム

全ての環境でIaCが十全の機能を発揮できるわけではありません。
特にIaCがサポートしていないようなコンポーネントが混在しているような環境であれば、IaCを導入することで返って混乱を生むことがあります。
IaCを導入するのであれば、IaC上から全てを管理できる状況に切り替えることを前提としてください。

 

すでに長年手動で管理されているレガシーシステム

古いシステムこそ、IaCを導入して管理コストを下げたい……と思うかもしれませんが、ぜひその判断は慎重に行ってください。

 

手動でいくつもの修正が加えられている状態からIaCを導入した場合、整合性の問題が各所で発生する可能性があります。
更には先程も述べた通り、そのレガシーシステムに関わるコンポーネントが、IaCでサポートされているのか、という問題もあります。

 

もちろん完璧にIaCへ対応させたならば、恩恵を十分に受けることができると思いますが、それまでにしっかり時間を掛けて検証を行ってください。

 

知識が十分でない状況で使うIaC

序盤に、『IaCを使うことで、セキュリティ体制を向上させることができる』と書きましたが、これが逆に作用することもありえます。

 

例えばコードの記述者に十分な知識がなく、誤ったセキュリティ設定でコードを書いてしまったとしましょう。
そのコードを何も考えずに使い続けた場合、全ての環境で同一のセキュリティホールが複製される、という悲劇が起こります。

 

なのでIaCを使う際には、本当にその環境を複製して問題ないか、しっかりと確認の時間を取ってください。
もしコードの書き方に不安が残るのであれば、そのときは経験者を頼ることをおすすめします。

 

なおIaCの導入に関するご相談や、コードの作成については弊社で承ることが可能です。
体制や要件等に沿った形でご提案することが可能なので、必要な際はぜひお問い合わせください。

 

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