ECサイトを運営していて「なかなか売上が伸ばせない」「何から手を付けたらいいのかわからない」という声はとても多いです。


そのようなサイト運営者に限って、「デジタルトランスフォーメーション」だの「サブスクリプション」だの「ビッグデータ」などのバズワードを追いかけている印象ですが、私からすれば「いきなりメッシのプレーを真似しようとしている、ただのサッカー好き」のようです。ろくにボールを止める、蹴る、走るの基本もできていないのに、華麗な足技だけを真似するようなものです。


今回は、ECで売上を伸ばすための、基本を学んで成長のための足固めをおこなってもらえるような情報をお伝えして、少しでもお役に立てればと考えています。


先にECサイトに関する基礎知識を理解したい人は以下の関連記事をご覧ください(外部サイト)

【関連記事】【徹底解説】今さら聞けないECサイト運営業務の基礎知識

【関連記事】ECサイトの構築方法と成長ステージ【基礎知識と3つのステップ】


勘違いのWebマーケティングが売上を阻害する


ECサイトで成長するためのポイントは?


オンリーワンの魅力的な商品?

お金をかけてガンガン集客している?

徹底したデータ活用?



どれもECにとって必要なものですが、基本ができてからの応用だと言えます。
リアル店舗で考えてみてください。
どれだけ素晴らしい商品を仕入れてこようが、TVCMでガンガン宣伝しようが、「売り場であるお店が魅力的かつ、ストレスなく買い物が楽しめる場所でないと、結局売れないのです」


ところが、ECになるとそんな当たり前のことが忘れられがちになります。アクセス数や、CPC(クリック率)、CVR(成約率)、CPA(獲得単価)といった数字だけで判断してしまうと、最も重要なお客様の満足度を見失ってしまうからです。


また、多くのお客様を連れてこようと集客を頑張るよりも先に、まずはお店の魅力化を優先すべきです。そうしないと、お金と時間をかけてユーザーを連れてきても、穴の空いたバケツに水を注ぐようなもので無駄が多すぎるからです。そのため私はECサイトの魅力化を優先すべきと常に言っています。


結論、ECの売上を伸ばすのに不可欠かつ最重要なのが「徹底したお客様理解と如何に満足して購入してもらえるか」ということです。これはオンライン、オフライン問わず共通です。
それを忘れないでください。



コロナ渦の影響で急成長するEC市場


では、ここでEC市場について理解しておきましょう。コロナ禍の影響で、ECの成長スピードが速まっているのは周知のとおりですが、では日本国内でECサイトの数はどのくらいあるのでしょうか?

結論から言うと、日本国内のECサイトの数は約270万店舗あり、そのうちモールが約110万、自社ECが160万となっています。

<参考>【2019年最新版】国内のECサイト・ネットショップの総稼働店舗数(外部サイト)


これだけ大量にある店舗のなかから自社のECサイトを選んでもらうのは簡単ではありません。実際、270万もある店舗の中でもしっかりと利益につながげている店舗はごく一部です。

キレイなECサイトにすれば売れる、広告をかければ売れると思っている方は、早々に行き詰ってしまうことでしょう。


ECビジネスは、今回紹介するように、ロジカルに考えてスピーディなPDCAを回すこと(左脳)と、お客様を徹底的に理解してユーザーの感情を揺さぶる(右脳)、これら左脳/右脳の両方をバランス良く活用しなければいけません。




売れないECサイトに見られる特徴



私自身、数多くのECサイトに携わってきましたが、売上が伸びないECサイトに一定の共通点があるということに気づきました。いろんな要素がありますが、特に共通するのが以下の内容です。


売れないサイトの3つの特徴


①「Webサイトがわかりにくい」

Webサイトがわかりにくいというのは、ケースとしては企業の都合で作られていて、実はお客様が知りたい内容になっていないというケースが結構多かったです。


②「リピートにつながらない」

これは理想的なのは、売り上げの7割がリピーターで新規が3割ぐらいがいいんじゃないかなと考えています。なぜかというと新規の獲得コストは非常に高いので、そこだけに依存してしまうとなかなか費用対効果が合わない、投資するコストも生み出せないということで頭打ちになりやすいです。反対にリピートが9割とかになってしまうと、リピーターというのはいずれは去ってしまうものなので、事業の成長性が見込めないという意味でいうと、これは業種業態にもよりますが、バランスが良いのはリピーター7割、新規3割が理想的です。


③「戦略がない」

最後に戦略がないという話です。よくあるのが「他社が上手く行ってるから、うちもそれをやりたい」というケースなんですね。ただ、これは同じ商品、同じブランド認知、同じビジネス環境であれば再現性はあるんでしょうけども実際はなかなかそういう訳ではないので、博打に近い形になってしまうのであまりオススメしないですね。

こういった3つの特徴があると思います。では「これを解消するためにどうしていけばいいのか」ということについて、簡単な事例を元にご説明させていただきます。


どうやって改善したのか?事例で解説


事例①:Webサイトがわかりにくい


1つ目のWebサイトがわかりにくいという話ですが、とある企業さんのECサイトでは単に商品画像を規則的に並べているだけで、いわゆる倉庫のような感じになっていたわけですね。ですので、欲しい商品があってもお客様が自分で商品をくまなく探すことになりとても面倒なため、結果として直帰率が非常に高くなりました。


企業の考えとしては「お客様の色々なニーズに全部応えるため、とにかく商品を増やすんだ」と気合を入れていたわけですが、結果「お客様にとって選択肢が多すぎてストレスを感じることに繋がり、商品を買ってもらえない」ということが調査でも分かっていますので、これはあまりよくない状態でした。


分析した結果「どの商品がよく売れているのか」ということはわかっていましたので、改善後は分かりやすく「店のオススメはこれですよ」という3つに絞って、それ以外の商品もお客様の選ぶカテゴリーごとに商品を分けて選びやすくしました。その結果、直帰率が60%以上あったものが40%まで改善しました。一般的にお客様というのは3種類から5種類くらいまでの選択肢が一番満足度が高いそうです。ただ、選択肢がそれ以上あると逆にどれが良いのか迷ってしまうようです。


付け加えますと、先ほどの3種類の選択肢の中で「松竹梅」のランク付けをしますと、結果、真ん中が一番売りやすいということで、あえて値段差をつけて一番売りたい商品を真ん中に置くというようなことを行いました。


事例②:リピートにつながらない


別の企業様のケースでは「商品を購入いただいた方がリピーターとして定着せず、2回目、3回目、4回目のそれぞれでどれくらい減少していくのか」ということを分析した結果、なんと一度買ったきり戻ってこないお客様が6割以上というショッキングな結果となりました。


ただ「2回目に買っていただくと、それ以降3回目、4回目、5回目と比較的長くご購入いただける」ということがわかったんです。


ECの中で最も難しいのは、初回購入よりこの2回目に買っていただくことなんですね。なぜなら1回目は見せ方の工夫をすればイメージで売りやすいんですけども、2回目は既に商品を手にして使っているため、サポート対応や企業とのコミュニケーションの部分で企業の地力が試されてしまうからです。


ですので、ごまかしがきかないという意味では難しいんですけれども、この企業さんの場合は新規を取るために初回のプロモーションというところに軸足を置いていたので、リソースを「いかに2回目以降に促すか」ということに切り替えて、売上アップにつなげたというケースです。


事例③:戦略がない

最後の③なんですけれども、ここはもうみなさんも既にご存知の方が多いかと思いますが、いわゆる3C分析ですね。

基本中の基本となる、「自社」「競合」「顧客・市場」ですが、ただ私が見ている限りきちんと使いこなせている企業様はまだまだ少ないのではないかなと思います。


これを踏まえて、自社の強みや競合優位性を理解してから戦略を立てないと、単なる自己満足になってしまいます。戦略については、語りだすと長くなりますので、ここでは省略します。


売上アップのためのサイト改善4ステップ


ここまで読んでいただいて、ダメなパターンや重要なポイントをご理解いただけたかと思います。
ここからは、実際にどのような手順でサイト改善を行い、売上アップにつなげていくのかをご紹介します。



上記が改善を進めるうえでの基本的な手順です。ケースにより順番や優先度が変わるときもありますが、最初はこの通り進めていけばよいでしょう。

もちろん、これを基本的な対策方法なので、これだけでぐんぐん売上が伸びる訳ではありませんが、そもそも最低限のことすらできていないECサイトが、他のことをやっても伸びるはずがないというのが私の考えです。

まずは基本をしっかりとマスターしたうえで、さらなる集客や、新たな商材へのチャレンジをするようにしましょう。



①サイト分析で現状把握してボトルネックを発見する


結論から言えば、売上を阻害する要因は「集客」「サイト回遊」「コンバージョン」の3つのどこかに潜んでいます。もちろんひとつだけではなく、大小いろんな要因があることでしょう。

ただ、いきなり全部を分析しようとすると、手間や時間ばかりかかってしまい、効率的な改善は実行できません。まず「集客」「サイト回遊」「コンバージョン」にポイントを絞って分析することで、効率よくボトルネックを発見することができます。


ここで気を付けたいのが、単に数字を洗い出してもそれが良いのか、悪いのかは判断しにくいです。私の場合は、これまで100以上のECサイトの分析をしてきましたので、一目みるだけで良い/悪いの判断ができますが、自社サイト運用を行っているだけでは比較対象がないので正直わかりません。

ではどうすればいいのでしょう?



ズバリ!それはユーザーに聞くことです。


ECサイトで重要なのは、ユーザーがストレスなく買い物をできているかどうかです。

サイトに来てくれた人でもいいですし、周りの知人にお願いして、実際にECサイトで買い物をしてもらい、気になる点、改善すべきと思う点を直接聞いてみるだけでも、驚くほど問題点がたくさんあることに気づくでしょう。

最初のうちは、3~5人程度でも十分です。できれば、実際に買い物をしている様子を見ながら、どこで迷っているのか、想定と違う行動をしていないかなどをチェックできると良いです。

ユーザーテストを行ったことがなければ、必ずやってみることをオススメします。大金をはたいて、大げさなリサーチやツール分析をするよりも、全然こちらのほうが良い気づきが得られるでしょう。


実際に、めちゃくちゃお金をかけてリサーチやツールを使いまくった私が言うのですから間違いありません(笑)


実際のお店で考えてみるとよいでしょう。お店が見つけやすい場所にあって気軽に入ることができるのか?商品を探しやすいように陳列されており、それぞれ魅力的な説明になっているか?購入までスムーズに誘導できており、不安やストレスを抱えずに購入ができるか?

そんな当たり前のことができていないECサイトが山ほどあるのが実情です。



②目標を設定する


次に、明確な目標を立てていきましょう。いつまでに、どのくらいの売上アップを目指すのか。これを立てずにECサイト運用をするなんて、地図もなく冒険をするようなもので自殺行為です

自分がどこを目指したいのか、ハッキリさせてから動きましょう。


売上が大きく、期間が短いほど、難易度が高くなるので、リスクの高い施策にチャレンジする必要があります。

売上を2~3割伸ばすのであれば、今やっていることの工夫などの戦術改善でよいでしょう。しかし、売上を3~4倍に伸ばすとなると、小手先の工夫ではダメで、戦略レベルから見直す必要があります。

具体的な目標が決まれば、売上を構成する要素を因数分解して、適切な(KPI)を策定しましょう。



上記の図はKPIツリーと呼ばれるもので、目標達成するためには、何をしないといけないのかが明確になりますので、この作業は必ず行うことをおすすめします。



③施策の優先順位を決めて実行する



優先度、難易度を元に施策の優先順位をつけて実行プランを立てるようにしましょう。

間違いやすいのが、まず手を付けやすい施策からやってしまうことです。でも、一生懸命やっても成果にあまり影響がないとムダになってしまいます。


たいていの場合、やりたいことが10個あっても、時間やコストの制約でせいぜい実行できるのは2~3個程度です。そのため目標を達成するのに必要な施策に絞り込んでから行うことが重要です。

施策が絞り込めると、次に、それによる売上見込み、掛かるコスト、スケジュールをざっくりとシミュレートします。ここでは正確なシミュレーションは必要なく、ざっくりこれぐらいといった感じでよいでしょう。ポジティブ/ネガティブの2パターンがあると尚よいです。


慣れてくると徐々に精度が高くなってきますので、考える癖をつけていくようにしましょう。

ここがしっかりとできると、施策の投資対効果が可視化できるため、クライアントや経営者からの承認を得られやすくなります。


例えば、「この施策を行うことで、1年後に1億円の売上増が見込めます。それに掛かるコストが2,000万円で、実行するのに必要なものが○○です。最悪のシナリオでもその半分は見込めるので、ぜひ承認してください」というプレゼンができたらどうでしょう?
何かイケそうな気がしませんか?

さらに根拠となる計算や資料があれば、承認してもらえる可能性がぐっと高くなります。


④効果検証


ここまで準備できれば、あとは計画通りに実行するだけです。

まずはスピーディにやってみて、良かった悪かったの効果検証を早めに行おう。Webの強みは、数値化できる点とスピードなので、いきなり100点を目指さずに、まずは60~70点までやってみて効果検証を行うことをおすすめします。100点に仕上げなくても、良い/悪いの判断は十分できるので、あとは良い/悪いの原因を探り出して、さらに改善のPDCAを繰り返すだけ。


マーケターは右脳と左脳をフル回転させよ


ここまでしっかりとやっておけば、あとは放っておいても売り上げが伸びるようになります。


もちろん、右肩上がりに一直線ではありませんが、ビジョンを明確に持って、改善の手を打てば打つほど数値は伸びるものです。


繰り返しとなりますが、デジタルマーケティングでは何でも数値化できるのでロジカルな施策に終始しがちですが、何より大切なのは「顧客の理解と、ユーザーの心を揺さぶる」ことです。

逆に言えばそれができないうちは半人前のマーケターなので、常に右脳/左脳をフル回転させる癖をつけるようにしましょう。特に何の才能もスキルもない私でも、ECにおいて成果を出すことができたのは、これを徹底してきたからだと考えています。


今後、ますますECに対するニーズは高くなってくるはずですので、是非基本を身に付けて、売れるECサイトを増やしていきましょう!


どう進めたらいいのか分からない、専門家に手伝って欲しいという方は、私にお気軽にご相談くださいませ。


みらいマーケティング本舗

代表:堀野正樹
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