日本人が話す英語や日本人が書いた英文には、時折「この表現はちょっと差別的かも」と思うことがあります。

英語文化圏では、常に差別的な表現を避けるよう言葉が進化しているため、日本人がそれについていけていないということが理由の1つです。


もう1つは、日本人が欧米とは大きく異なる歴史を経験してきたことから、差別、特に人種差別には鈍感で、日本語を英語に直訳すると差別的な表現が生まれてしまうということもあります。

今回は日本人が無意識に使いがちな差別的な英語表現を紹介します。


欧米での差別的発言は人間としての評価、または企業の評価を落とします。

今回の記事を読んで、ぜひ差別的な表現に敏感になってください。


Man

英語で一部の職業や肩書きを表すときに「man」という言葉が使われていました。

例えば、Police man(警察)、fireman(消防士)、businessman(ビジネスマン)、chairman(議長)などです。

最近は「man」をつけずに単に「police」と言ったり、「firefighter」と言い変えられていたり、「businessperson」、「chairperson」など「man」「person」に置き換えたりしています。

日本語でも「看護婦」が「看護師」に変わったり、「保母」が「保育士」に変わったりしました。

しかし、英語になると「議長」と言いたいときにとっさに出てくる言葉が「chairman」だったりします。

口癖になっている場合もあるので「man」が入っている単語には気をつけるようにしましょう。


Indian/American Indian

よく知られていることですが、アメリカ大陸に住んでいる先住民のことをアメリカでは「インディアン」とは呼びません。

「インディアン」という呼び名は先住民たちに対して、アメリカ大陸を発見した欧人が名づけた呼び名だからです。

アメリカの先住民は現在、「Indigenous American」、「Native American」と呼ぶのが通例です。

参考までに、チーム名が差別的であるという理由から、アメリカの大リーグ、クリーブランド・インディアンズというチームは、2021年にクリーブランド・ガーディアンズに、アメリカン・フットボール・チームのワシントン・レッドスキンズは2022年にワシントン・コマンダーズにチーム名を変更しています。


Handicapped

身体障害者を表す言葉として「handicapped」という呼び方があります。

他にもdisabled、crippled、invalidなど身体障害者を示す英語表現はいくつかあります。

実際に英語話者がこれらの言葉を使うことはありますが、身体障害者を見下しているという印象があることから、現在は「person with a disability」という呼び方が奨励されています。


Minority

少数民族、少数派を意味するMinorityという言葉も差別的な表現とされています。

Minorityという言葉が使われなくなったのは、Minorityという言葉が被支配者、従属者、弱いものという意味で、少数の人々よりも優位、上位の立場にある人々が少数の人々を軽蔑的に呼ぶ際に使われていたからです。

最近では少数のグループに属す学生を「students from underrepresented backgrounds」と呼んだり、社会的に少数の人々を「systemically minoritized groups」「marginalized groups」と呼んだりします。


Third world

「Third world」とは「第3世界」という意味で主に発展途上国を指します。

しかし、「Third World」という言葉には「原始的」「未開な」という意味も含まれるため、最近ではあまり使われなくなりました。

同じような表現で「under developed country」という言葉もありますが、これも「発展していない」「未開の」という意味があるため、最近では「developing country」

という表現が使われています。


Bossy

「Bossy」には「偉そう」「威張っている」という意味があります。

同時に「能力が高くリーダーシップがある」という意味で使われることもあります。

しかし、多くの場合は前者のネガティブの意味合いで使われることが多く、最近では使用を控えるように注意喚起されています。

もしも、「能力の高いリーダーである」と言いたいときには「He is bossy」というより「He is driven」という表現を使うといいでしょう。


At risk

「At risk」とは「危険にさらされている」という意味です。

しかし、成績が悪い生徒に「落第の危険があるぞ」と伝える際に「You are at the risk」と伝えることは避けた方が良いそうです。

というのも「You are at the risk」はその人の性質そのものを責めているようにも聞こえるからです。


Limited English Proficiency (LEP)

以前は英語が苦手、または英語を母語としない人々のことを「Person with limited English proficiency」と呼んでいました。

直訳すると「英語の能力に限りがある」という意味になり「英語が得意でない人々」を示す言葉でした。

しかし、最近ではこの表現も差別的であると認識されて「Emergent Bilinguals」などと呼ぶことが奨励されています。


White/Black

良し悪しを色で表現することは避けるべきです。

日本でもブラック企業・ホワイト企業、ブラックリストなどということがありますが、悪いことに対して「ブラック」という表現を使うことは「肌の色が黒い人々も悪である」という印象を与える可能性があるため、避けることが懸命です。

英語でもblackとwhiteで良い、悪いを区別するのではなく単純にgood、badで表現する方が良いでしょう。

日本でもよくブラック企業、ブラックリストという表現を英語に直すときには気をつけるようにしましょう。


Master/Slave

Master/Slaveはもともと主人と奴隷の関係を表現した言い方なので避けた方が良いでしょう。

「MasterまたはSlaveなんていう表現は使わないけど・・・・・・」と思われる方も多いかもしれませんが、「マスターキー」という表現は使ったことありませんか?

この表現ももともとは「Master/Slave」から派生しているので避けるべきです。

また、「原本」のことを英語では「master copy」といいますが、この表現も避けた方が良いでしょう。

「Master key」については「Primary key」、「master copy」については「primary copy」という表現を使うようにしましょう。



まとめ

日本は差別意識の薄い国です。

日本がそのような国になった背景には地理的条件や歴史的背景があるので仕方のないことかもしれません。

日本国内で、特に傷つく人がいないのであれば、外国人から差別的と思われる表現を使ってもいいでしょう。


しかし、日本人が海外に出るとなると別です。

海外に出るということは外国人と対等な立場になるということなので、外国人が差別的表現を嫌うのであれば、差別的な表現や言い回しは徹底的に避けるべきです。


会話の中でうっかり出てしまう分にはまだ許されます。

ただし、企業のウェブサイトや事業報告書などに記載してしまうと企業の評価が著しく低下してしまいます。

ご心配な方はぜひお気軽にご相談ください。



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