あなたの名刺には肩書きの英語表記がありますか?

 

英語表記されているあなたの肩書きは役職に応じた適切な英語になっていますか?

規模、分野にかかわらずウェブサイトを持っている企業は世界に向けて広告を出していることと同じです。

 

特にIT企業であれば世界の企業とつながる可能性は高く、外国人の優秀なエンジニアがあなたの会社に興味を持つこともあるでしょう。

 

しかし、肩書きが適切な英語表記でしめされていなければ誤解や問題が生じたり、会社の評判をおとしてしまったりすることもあります。

 

また、IT企業としてあるべき役職やグローバル社会に応じた役職が置かれていなかったら、外資系企業から信頼を得られないこともあるでしょう。

 

この記事では海外駐在経験があり、IT分野に強いプロの翻訳家が海外のIT企業で使われている英語表記と役職について解説します。

 

グローバル化がどんどん加速しているこの時代に乗り遅れないためにも、この記事を最後まで読んで、世界の企業と気持ちよく対等な仕事ができる組織になってくださいね。

 

そもそも肩書きって必要なの?

肩書きには「あなたの役割を一言で伝える」役割と、「組織のなかでのあなたと他の人の関係性を表す」役割があります。

 

この章では肩書きの二つの役割を具体的に説明します。

 

肩書きは、あなたの役割を一言で伝える道具

 

「肩書き」はあなたの役割を短い文章で端的に伝える道具です。

 

たとえば、「営業部長」と言われれば、製品やサービスの売り上げを伸ばすための営業戦略、その成果、実際の売上金額など営業にかかわるすべての情報を把握している人と認識されることでしょう。

 

「経理部長」であれば、社内の経理、財務状況など会社全体にかかわる数字を把握している人と認識されます。

 

会計ソフトを売り込みたい会社の営業担当は、おそらく「営業本部長」に声をかけることはなく、「経理部長」に声をかけることでしょう。

 

なぜなら、「肩書き」を見れば、経理ソフトを必要としている人が誰なのかがすぐわかるからです。

 

「肩書き」はあなたと同じ組織で働く人との関係性を明確にする

 

「肩書き」には、あなたと組織で働く他の人々との関係性を表す役割もあります。

 

たとえば「営業本部長」であれば「学校事業係長」や「海外販売促進課長」よりも地位は上であることがわかります。

 

営業戦略にかかわる提案や企画は営業本部長の承認があったのち、社長のようなより上位の経営者に提案されなければいけません。

 

よって、「学校事業係長」や「海外販売促進課長」が営業本部長の承諾なしで、社長に企画案を提示することはありえまえせん。

 

一般的には肩書きを見ただけで、企画案は最初に誰に見てもらって、承諾を得るのかということがわかります。

                                                      

このように肩書きには主に「あなたの役割を一言で伝える」ということと、「組織のなかでのあなたと他の人の関係性を明確にする」という二つの役割があるのです。

 

海外でも肩書きは重要?

外資系企業の方が日本の企業よりも肩書きを重視する傾向にあります。

なぜなら、その後のキャリアや給料に影響を与えるからです。

クリエイティブ分野、マーケティング分野、デジタル分野に特化したアメリカの人材関連企業のエイクエント(Aquent)は「サラリーマンの70%が給料よりも肩書きを重視している」と報告しています。

外国人は給料が高い職場よりも、より地位の高い肩書きを持てる職場を選択する傾向にあるそうです。

(参考:https://aquent.co.uk/blog/do-job-titles-really-matter

 

新興国や発展途上国においては、より高い肩書きを得るために働いている人が多いと言っても過言ではありません。

 

日本では、近年、肩書きをなくすIT企業やベンチャー企業が増えているようですが、外資系の企業では肩書きがどんどん重要になっているようです。

 

このような状況においては、日本の企業も海外で通じる英語の肩書きを準備しておく必要があるでしょう。

 

外資系大手IT 企業の経営幹部の肩書きと役割を解説

この章ではマーク・ザッカーバーグ氏が率いるアメリカの大手IT企業「Meta Platforms Inc.」の肩書きを参考にしながら、外資系IT企業の経営陣にはどのような役職があり、どのような肩書きになっているのかを解説します。

 

  • Chairman

会長:会社の事業を監督、事業戦略を考えたりする取締役会をまとめます。

 

  • CEO

Chief Executive Officerの略称で、日本語では最高経営責任者と訳されます。

日本における法律ではCEOの規定は存在しないので、日本では役割が曖昧になりがちですが会社の経営方針や事業計画の責任を負うという点が共通した認識です。

Meta Platforms Inc.の場合マーク・ザッカーバーグ氏がChairmanとCEOの両方を兼ねています。

 

  • President

通常、日本では社長と訳されます。日本では社長が会社経営のトップとされることが多いのですが、CEOを置く外資系企業において社長は現場の総責任者という認識です。

 

  • COO

Chief Operations Officerの略称で日本語では「最高執行責任者」と訳されます。

CEOが会社経営の方針や戦略を作成して指示を出す役割であるのに対して、COOは経営方針に基づいた事業を遂行する責任者となります。

 

  • CTO

Chief Technology Officerの略称で日本語では「最高技術責任者」と訳されます。

文字通り、企業が開発する技術や採用する技術の総責任者です。

 

  • CPO

Chief Product Officerの略称で日本語では「最高製品責任者」と略されます。

商品や製品の質や流通に関わる総責任者です。

Meta Platforms Inc.の場合、商品が見えにくいのですが具体的にはFacebook、Instagram、WhatsApp、Messengerといったアプリケーションの総責任者となります。

 

  • CFO

Chief Financial Officerの略称で日本語では「最高財務責任者」と呼ばれたりします。

日本の経理部長にあたる職ということもできますが、経理部長とCFOには大きな違いがあります。

CFOには企業が取り扱う資金やお金について、調達や使用方法を戦略的に考えるという役割があります。

日本の経理部長のように社内のお金を管理する以上の役割と権限をCFOは持っています。

 

  • Chief Strategy Officer

日本語では「最高戦略責任者」と訳されます。

Chief Strategy officerの役割はCEOの片腕、ブレインとして企業の中長期的経営戦略の立案を行うことです。

日本の企業で「戦略」と名のつく肩書きには「IT戦略部長」「サステナビリティ戦略部長」などがあります。

これらは各部門の傘下に戦略立案のチームが設けられる構造となっており、アメリカの企業のような組織全体を統括する「最高戦略責任者」が置かれないことが日本企業の特徴かもしれません。

 

  • CLO

Chief Legal Officerの略称で日本語では「最高法務責任者」と呼ばれます。

日本では「法務担当者の長」と誤解されがちですが、役割は大きく異なります。

法務担当者は契約書などの法的書類の作成、法的手続きの遂行を担当しますが、CLOの役割は法的知識を活かして、それを経営方針に反映させる、経営戦略の立案に盛り込むことです。

 

  • Chief Privacy Officer(policy、product)

日本語では「最高個人情報保護責任者」と呼ばれます。

日本ではあまりなじみがなく、海外でもインターネットの普及に従って創設された役職です。

しかしGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)と呼ばれるアメリカの大手IT企業には必ず存在する役職です。

Meta Platforms Inc.の場合、個人情報保護方針の策定や改定を行う責任者「Chief Privacy Officer, policy」と製品に個人情報保護の仕組みや機能を盛り込む責任者「Chief Privacy Officer, product」の二つの役職があります。

この点はさすがにアメリカの大手IT 企業です。

今後、日本でも「Chief Privacy Officer」を経営に欠かせない重要な役職として扱わなければ、外資系の企業から信頼されなくなるかもしれません。

 

  • Head of People

Meta Platforms Inc.に置かれている「Head of People」という役職は日本語には訳しにくいのですが、簡単にいうと人事部のトップのことです。

「Head of People」の下には「Global Head of Recruitment」「Human Resource」「Chief Diversity Officer」という役職があります。

「Head of People」は日本の企業でいう「人事部長」とは異なり、材確保や人材管理という視点から会社経営の方針や中長期計画の立案を行う役職と考えられます。

「Head of People」が管轄する役職のなかで注目すべきは「Chief Diversity Officer」ではないでしょうか。

多様な人材を集めるための戦略や方法を立案したり、人種差別のない職場環境をつくったりするための役職です。

常に優秀な人材を求め続け、スキルを重視し人種・国籍などで差別しない企業風土が大事にされている様子を伺いしることができます。

 

以上のようにMeta Platforms Inc.経営陣の役割は、経営方針、中長期戦略・計画の立案であることがわかりました。

 

経営陣には、財務、法務、技術、人事の専門家が組み込まれていることもわかりました。

 

また、インターネット時代、グローバル時代に不可欠な個人情報保護に特化する役職や人材の多様性を活かすことに特化した役職がある点は日本企業が見習うべき点です。

 

このように考えると、現状の日本の役職を英語表記に変換するだけでは、外資系企業、特に外資系のIT企業には通用しないことがわかります。

 

実際の業務や役割に応じた英語の肩書きを作成する以上に、そもそもの日本語の肩書き、役職のあり方も見直すことが世界を相手にする企業には必要不可欠なようです。

 

まとめ

この記事では外資系大手IT企業の「肩書き」について解説してきました。

この記事の内容を以下にまとめます。

 

  • 肩書きには以下の二つの役割がある。
    1. あなたの役割を一言で伝える
    2. 組織のなかでのあなたと他の人の関係性を表す

 

  • 肩書きは日本企業よりも外資系企業の方が重要視している

 

  • Meta Platforms Inc.の肩書きは時代の流れと必要に応じて新設されている

(たとえば、個人情報保護、多様性の専門役職など)

 

  • Meta Platforms Inc.の経営陣には財務、法務、技術、人事、個人情報保護の専門家が組み込まれている

 

あなたの肩書きを適切な英語表記にするには、日本語の役職名を単純に英語に訳すだけでは不十分です。

 

海外の企業から信頼されるためには、時代に合わせた役職の設立、経営方針や中長期戦略・企画の立案にたずさわる専門家をメンバーとした経営陣を作り上げる必要があります。

 

英語の翻訳や通訳だけではなく、世界に通じるIT企業になるための組織の作り方についてもぜひご相談ください。

 

株式会社LA ORG 桝村(https://la-org.com/)