動画の字幕翻訳を作成してみたもののアクセス数が伸びずに悩んでいたりしませんか?

字幕翻訳を受注して納品はできたものの、その後の受注がまったくないなどということはありませんか?

 

アクセス数が伸びない、案件が減ってしまった理由の多くは字幕翻訳が残念な結果になってしまっている可能性が高いです。

 

今回の記事では、残念な字幕翻訳の例を紹介し、残念な字幕翻訳を作成しないための対処法についてお伝えします。

最後まで読んでいただけたら、今後どのように字幕翻訳を作成するべきなのか理解していただけると思います。

ぜひ最後までお読みください。

 

AIと自動翻訳機がつくりだす残念な字幕翻訳とは

AIと機械翻訳の発展により、知らない言葉を私たちは携帯電話などを使って瞬時に翻訳できるようになりました。

 

日常的に使用する短い文であればAIや機械翻訳に頼っても問題はありませんが、人の感情が深く入り込んだ文、文脈にあったセリフなどをAIや自動翻訳機が作成することはまだまだ難しい状況です。

 

ここでは、AIや自動翻訳機に頼りすぎてしまったために生じる残念な字幕翻訳結果の事例を紹介します。

 

機械翻訳に頼りすぎている

機械翻訳に頼りすぎた字幕翻訳は、字幕が長くなりすぎる傾向があり、意味もあいまいになりがちです。

機械翻訳は短時間で正確に翻訳をしてくれているように見えますが、しっかり読むと

シーンの雰囲気や文脈からも外れていることが多々あります。

 

たとえば、イチロー選手の引退会見です。

 

原文:今日のゲームを最後に日本で9年、米国で19年目に突入したところだったんですけど、現役生活に終止符を打ち、引退することとなりました。最後にこのユニホームを着て、この日を迎えられたことを大変幸せに感じています。

 

これをGoogle翻訳で機械的に翻訳すると以下のようになります。

 

訳文:I had just entered my 9th year in Japan and my 19th year in the United States with today's game as my last, but I have decided to put an end to my active career and retire. Finally, I am very happy to wear this uniform and welcome this day.

 

きれいに翻訳ができているように見えますが、しっかり読むと違和感だらけです。

 

たとえば、「日本で9年、米国で19年目に突入したところだったんですけど、」は「I had just entered my 9th year in Japan and my 19th year in the United States」と訳されています。

しかし、英語に翻訳された部分を読むと「私は日本の9年目、アメリカの19年目に突入したところです」という意味になってしまいます。

 

「最後にこのユニホームを着て、この日を迎えられたことを大変幸せに感じています」という部分については、機械的に翻訳をすると「Finally, I am very happy to wear this uniform and welcome this day」と翻訳されてしまいます。

 

翻訳された英語の意味は「最後になりましたが、このユニフォームを着てこの日を歓迎することができて幸せです」です。

この文は「I am very happy to have this day wearing this uniform at the end」と訳したほうが、より正確にイチロー選手の気持ちが伝わることでしょう。

 

機械翻訳には頼り過ぎないようにしましょう。

 

文脈を無視した逐語翻訳

字幕翻訳で一番よく見受けられるのが文脈を無視した逐語翻訳です。

AIや自動翻訳機で作成した翻訳文は文脈を無視しがちです。

 

また、字幕翻訳の経験はないけれども、翻訳経験は豊富にあります、という翻訳者にもよく見られる傾向です。

優秀な翻訳者、特に説明書や契約書の翻訳経験が長い翻訳者はできる限り一語一句正確に意味を間違わないように翻訳しようとするからです。

 

しかし、ドラマや映画、動画の翻訳は一語一句正確に訳すことで、雰囲気を壊してしまう可能性もあります。

また、正確に訳そうとしてがゆえに、意味がわかりにくくなってしまうこともあります。

 

たとえば、友達にもらったタバコがまずくて「This is not a cigarette!」と言うシーンがあったとします。

これをていねいに翻訳して「これはタバコじゃないじゃないか!」と訳すと、「じゃ、なんなの。麻薬?え、なに?」という疑問を視聴者は持ってしまいます。

 

この場合は「なんだ、このまずいタバコは!」と訳すと、「あ、まずいタバコなんだな」とすぐに理解できます。

必ずしも一語一句ていねいに訳すことがわかりやすい字幕翻訳につながるわけではないのです。

 

文法の間違い

文法の間違いは字幕翻訳の信頼どころか、映像そのものの信頼性も失ってしまいます。

基本的なことなので、絶対に間違えるはずなどない、と思われるかもしれませんが、意外と文法の間違いは多いのです。

 

その理由は同じ言語であっても地域によって文法が異なることが多々あるからです。

たとえば、アメリカの英語とイギリスの英語です。

 

同じ英語なのですがいくつか文法がことなります。

たとえば、集合名詞の扱いです。

 

アメリカ英語の場合、teamやgroupのような集合名詞は単数扱いです。

たとえば、My team is losing right nowというような使いかたをします。

 

しかし、イギリス英語の場合、集合名詞は単数で扱っても複数で扱っても良いのです。

 

以下の二つの文はイギリス英語ではどちらも正しい表現です。

 

My team is losing right now.

My team are losing right now.

 

特に英語のように世界中で使われている言語に訳す場合は、どの地域の人たちがメインオーディエンスになるのかをしっかりと意識して翻訳を行う必要があります。

 

一貫性のない口調、場面にそぐわない口調

口調に一貫性がなかったり、場面にそぐわない口調だと視聴者は違和感を感じたり、映像そのものに興味を示さなくなってしまいます。

口調は映像の雰囲気、発話者の気持ちを表す重要な要素ですが、口調に一貫性のない字幕翻訳は結構あります。

 

たとえば、大学の教授が専門用語や難しい言葉を使って講義をし、学生から質問を受けるシーンがあったとします。

講義中のセリフは専門用語がまざり、堅苦しいシーンに仕上がっているにもかかわらず、質問の回答が若者言葉でスラングが多用されていたらどうでしょうか?

 

視聴者は、「この人物はどんなキャラクターなの?」と疑問を感じることでしょう。

また、若者が上司と話をしているにもかかわらず、口調が緊張感のない友達と話をしているような口調になっている場合もあります。

 

このような場合、映像そのものに現実味がなくなり視聴者は営巣から離れてしまうことでしょう。

字幕翻訳の場合、一貫性のない口調やシーンに合わない口調は徹底的に排除しなければいけません。

 

長すぎる字幕

長すぎる字幕は映像を隠したりして、視聴者の興味を映像から遠ざけてしまいます。

通常、画面に表示する字幕は2行です。

 

それ以上に字幕が長くなってしまうと映像が隠れてしまいます。

また、字幕が長ければ視聴者は「早く読まなきゃ」という緊張感を持ってしまい、リラックスして十分に映像を楽しむことはできないでしょう。

 

映像を楽しむために、字幕付きの映像を見ているにもかかわらず、長い字幕は視聴者を字幕を読むことだけに集中させてしまいます。

字幕翻訳はあくまでも映像を見ている時に視聴者の理解を促進するための道具でしかありません。

 

字幕があるために視聴者が映像を見られなかったり、字幕に集中してしまったりしたら字幕をつけている意味がありません。

長すぎる字幕は絶対に避けるようにしてください。

 

不自然な改行

字幕の改行は文の終わりで行うべきです。

字幕を適当なところで改行してしまうと文章がわかりにくくなります。

 

字幕の意味をとらえきれず、もう一度読もうとしたら字幕が消えてしまった、では映像を楽しむどころかストレスがたまるばかりです。

字幕翻訳の一文は短いものを使うようにしましょう。

 

判読できない字幕

判読できない字幕翻訳は、字幕翻訳をつけている意味がありません。

文字が小さすぎたり、背景に埋もれてしまったりすると、視聴者は字幕を読み取れない可能性があります。

 

特に携帯電話で映像を見ることが増えている時代において、読みやすい字幕は必須です。

フォントが小さすぎる場合は、すぐに他の映像へと移ってしまうことでしょう。

 

画面上で判読できない字幕を作るくらいであれば、字幕などないほうがマシです。

背景の色に字幕が埋もれたり、字幕が小さくなりすぎたりしないように注意しましょう。

 

残念な字幕翻訳にならないための対処方法

ここまでは、残念な字幕翻訳の事例を紹介してきました。

これからは、残念な字幕翻訳を作成しないための対処方法をお伝えします。

 

以下の対処方法ができていれば、作成した字幕翻訳文が残念な結果になることはありません。

ぜひ実践してみてください。

 

機械翻訳を使ったときには必ず編集

どうしても機械翻訳を使わなければいけないときは、機械翻訳で翻訳した文章をかならず人の手で編集しましょう。

機械翻訳は文章を一語一句できる限り正確に翻訳するようにプログラミングされています。

 

そのため、映像の雰囲気に合わない翻訳を作成したり、また文脈から外れた訳文を作成したりします。

必ず機械翻訳をおこなったあとは人の手によって編集するというプロセスを入れるようにしましょう。

 

徹底的なリサーチ

翻訳者にとって最も必要なスキルは語学力ではなくリサーチ力です。

たとえば、古い映像に字幕翻訳をつける際にはその時代に話されていたであろう言葉を翻訳文に使うのが適切です。

 

近年、使われるようになった造語や若者言葉を使ってしまっては映像の雰囲気が台無しになってしまいます。

また、映像の舞台となっている町で使われている言葉を極力使うようにする必要もあるでしょう。

 

たとえば、ヨーロッパの路面電車です。

日本語に訳す場合は「路面電車」と訳してもいいかもしれませんが、「トラム」とそのままの言葉を使用する方が町の雰囲気を醸し出せる場合もあります。

 

また、フライドポテトもイギリス英語では「チップス」といいます。

イギリスを舞台にした作品の「I ate fish and chips」というセリフは「魚とフライドポテトを食べた」と翻訳すより「フィッシュ・アンド・チップスを食べた」と翻訳する方が雰囲気がでるでしょう。

 

用語・口調・文章スタイルルールの作成

用語、口調、文章スタイルのルールをあらかじめ作成しておくことで表記のブレや口調のブレを軽減することができます。

 

たとえば、「chips」は「フライドポテトではなく、チップスと訳す」と決めておけば、同じ翻訳文のなかで「フライドポテト」「チップス」「フレンチフライ」という言葉が混在することを防げます。

 

また、口調についても「このキャラクターは若者言葉、スラング多め」「このキャラクターはお嬢様口調」などと決めておけば、口調のブレも軽減できます。

 

高品質の翻訳文はすべてといっても過言ではないほど、スタイルガイド、用語集などを作成して、翻訳文の一貫性を保っています。

用語集やスタイルガイドを作成しておけば、同一案件に関わるすべての翻訳者が同じ品質基準の翻訳文を作成できます。

 

徹底的な校正作業

高品質な翻訳文に必要なのは徹底的な校正作業です。

校正作業の工程が多ければ多いほど、翻訳文の間違いを軽減することができ、品質も高まります。

 

質の高い翻訳文をつくる翻訳会社では別の人間による構成作業が少なくとも3段階は用意されています。

特に字幕翻訳を作成する際は、単純に正確に翻訳すればいいということではないので、第三者に確認をしてもらい、何度も校正作業を繰り返す必要があるのです。

 

まとめ

今回は残念な字幕翻訳文と、翻訳文が残念なものにならないための対処方法を解説しました。

 

今回の記事をまとめます。

 

残念な字幕翻訳の例

・文脈を無視した逐語翻訳

・文法の間違い

・一貫性のない口調、場面にそぐわない口調

・機械翻訳に頼りすぎている

・長すぎる字幕

・不自然な改行

・判読できない字幕

 

残念な字幕翻訳を作成しないための対処方法

1)機械翻訳を使ったときには必ず編集

2)徹底的なリサーチ

3)用語、口調、文章スタイルルールの作成

4)徹底的な校正作業

 

言葉というものは日々変わり続けています。

日々変わり続けるものは、AIであっても簡単に捉えることはできません。

 

また、言葉には同じ言葉であっても、文脈や使うシーンによってまったく異なる意味に変わることが多々あります。

このような言葉の変化については、AIや機械翻訳は対応しきれていません。

 

言葉についてはまだまだ人間の方が優っているのかもしれません。

字幕翻訳を作成する必要が生じた場合は、まずはお気軽にご相談ください。

 

残念な字幕翻訳を作成しないために、数段階に及ぶチェックの仕組みと人によって翻訳文を作成する作業を私たちは地道に行なっています。

 

 

株式会社LA ORG 桝村(https://la-org.com/)