近年、クラウドソーシングなどで翻訳の仕事を気軽に安く発注できるようになりました。

日英翻訳を行う会社の中には日本語を母語としない翻訳者を雇い入れているところも多数あります。

 

しかし、日本語からの翻訳、または日本語への翻訳はやはり日本語のネイティブに発注することをおすすめします。

今回は、日本語にかかわる翻訳業務を日本人にお願いするべき理由をお伝えします。

 

意味を捉えにくい漢字

みなさん、漢字はお得意でしょうか?

日本人であっても素直に「はい」と答えられる方は少ないでしょう。

 

また、「日本語の新聞の朝刊に使われている漢字をすべて間違いなく読めて意味を理解できる自信はありますか?」と聞かれたときに、「はい」と素直に答えられる人も少ないでしょう。

日本人ですらこのような状況であるにもかかわらず、日本語を母語としない方々はどれくらいの漢字を理解できるのでしょうか?

 

漢字が多く使われ、それを補うようにひらがなとカタカナが使われる日本語。

日本語を母語としない人々にとっては、異なる3つの言語が使われているという感覚と同じです。

日本語の意味を正確に捉えることができるのは、やはり日本語を母語としている人であり、翻訳者も日本語を母語としている人が最適なのです。

 

「曖昧な表現」を理解しなければいけない日本語

日本語の文章を読むときには「曖昧な表現」を理解する必要があります。

新聞や情報を提供する文章では、読者が誤読しないように「曖昧な表現」は避けられますが、手紙やe-mailなどでは「曖昧な表現」は頻発します。

 

たとえば、「ご連絡いただけたら幸いです」という表現は「ご連絡ください」と日本人であれば理解するでしょう。

しかし、日本語を母語としない方々であれば、「別に連絡くれても、くれなくてもどっちでもいいよ」という意味に捉えてしまう可能性が高いでしょう。

日本語特有の「曖昧な表現」をしっかり理解できている方に翻訳は頼みたいものです。

 

文化的な意味を捉えなければいけない日本語

日本語には文化的な背景や日本の慣習をよく知っておかなければ理解できない表現もあります。

特に謙遜する表現は日本語を母語としない方々には理解できないことが多いようです。

 

たとえば贈り物を渡すときの「つまらないものですが」「たいしたものではありませんが」という表現や、家族を紹介するときの「愚息ですが」「愚妻ですが」という表現です。

 

これらの表現を「It’s not worth giving to you」とか、「This is my stupid son」などと直訳してしまっては、誤解を招く翻訳文になってしまいます。

これらの表現は日本の文化特有のもので、日本の文化や習慣を理解していないと翻訳文を作成することは難しいでしょう。

 

単数・複数の区別がない日本語

日本語では名詞の「かたち」から単数・複数を見分けることはできません。

ですので、文脈から名詞が単数なのか複数なのかを判断する必要があります。

たとえば「生徒が口々に叫んだ」という表現です。

 

「生徒」という名詞だけでは、たくさんの生徒がいるのか生徒が一人なのかわかりません。

しかし、「生徒」のあとに続く「口々」という表現から生徒は一人だけではなく、たくさんいることがわかります。

「ランナーが一斉にスタートしました」や「企業が足並みをそろえるかたちになりました」という表現も同じです。

 

「一斉」という言葉があるからランナーが一人ではなくたくさんいることがわかりますし、「足並みをそろえる」という表現から企業がたくさんあることがわかります。

日本語で名詞が単数なのか、複数なのかを見分けるためには「口々」「一斉」「足並みをそろえる」という表現がどのような状態を表しているのかを知っている必要があります。

単数・複数を見分けるためには、状態を表す日本語の表現方法を知っていなければいけないのです。

 

代名詞が曖昧な日本語

日本語の大きな特徴に代名詞が曖昧という点があります。

たとえば「今日、学校行ったよ」という表現は普通に使われる日本語ですが、主語がなく、男性が言っているのか、女性が言っているのかわかりません。

 

また、日本語で書かれた文章には、文章や物語を読み進めなければ登場人物が男性なのか女性なのかわからないことが多くあります。

たとえば、「今日、学校に行ったら先生に呼び出されました。職員室に行くと、かずも呼び出されていて、先生と向かいあって座っていました」という文章です。

 

日本語の文章としては、特に問題のない文章ではありますが、登場人物が男性なのか女性なのか、この文章だけではわかりません。

日本語を英語に翻訳する場合、一文を読んだだけでは適切な代名詞がわからず、しばらく読み進めて文脈から使うべき代名詞を選択する必要があります。

 

まとめ

日本語を母語とするわたしたちにとって英語を含めて、外国語を理解することは難しいことです。

しかし、日本語は世界中の言語の中でも理解することが難しい言語と言われています。日本語を母語としない方々にとっては私たちが英語を理解する以上に日本語を理解することは難しいようです。

 

日本語を他の言語に翻訳する際には、できる限り日本語を母語とする方にお願いすることをおすすめします。

日本語を理解するためには書かれた文章を理解するだけでは不十分で、日本の文化的背景や習慣を理解しておく必要があるからです。

 

異なる言語から日本語へ翻訳を行う場合も同じです。日本語を母語としない方にお願いすると、文化的におかしな翻訳文が作られてしまう可能性があります。

日本語を母語としない人々にとって、日本語は難しい言語であるということを理解したうえで、英訳・和訳の業務の発注先は慎重に選択することをおすすめします。

 

 

株式会社LA ORG 桝村(https://la-org.com/)