日本に毎年「流行語大賞」があるように、英語圏の国々にも同じように、その年によく使われた言葉「流行語」があります。

しかし、海外メディアが頻繁に使うその年の流行語というのは、英字新聞や英語のニュース番組を頻繁にチェックしない限り、日本にはなかなか伝わってきません。

 

日本に伝わってこないから知らなくていいのかというとそうではなく、外国人と会議をしたり、報告書を読んだりすると頻出するので知っておいた方が良いでしょう。

今回は、2023年の上半期に英語メディアで頻繁に使われた日本人が聞きなれない表現を10個紹介いたします。

 

この記事を読めば英語ネイティブの方々との雑談、英字新聞、英文報告書もしっかりと理解できるようになるでしょう。

ぜひ最後までお読みください。

 

Polycrisis

Polycrisis(ポリクライシス)とは過去に起こっていた問題、たとえば戦争や経済危機、飢饉、疫病が新しいかたちで同時多発的に生じている状況を表す言葉です。

 

「poly」を日本語に訳すと「たくさんの、多角の」という意味になります。また「crisis」は日本語で、問題とか危機という意味です。

 

去年から、戦争、経済危機、飢饉、疫病という問題が同時に世界で生じています。

そのためにpolycrisisという言葉が頻出するようになりました。

 

Child wasting

Child wasting(チャイルド・ウェイスティング)とは、子どもが被害を被っている食糧不足のことです。

世界食糧計画は2022年の世界の5歳以下の子どもの健康状態について、1億4千810万人(22.3%)が発育不全であり、4,800万人(6.8%)が衰弱状態にあると報告しています。

 

この数は、近年の紛争、気候変動、食糧価格の高騰、新型コロナウイルスの蔓延などで、増える傾向にあるようです。

また、国連加盟国の全てが目標としている2030年までに達成しなければいけないSDGsの目標値からは遠ざかっていることから、Child wastingという言葉が頻出するようになっているようです。

 

Zero-dose children

Zero-dose childrenとは生まれてから一度もワクチン接種を受けていない子どものことです。日本語では「ゼロ接種の子ども」「ゼロ投与の子ども」などと言われます。

 

UNICEFの「世界子供白書2023(2023 State of the World’s Children report (SOWC)」は、2019年以降、基本的なワクチンを受けていない子どもの数が増えていると報告しています。

 

その背景には、新型コロナウイルス蔓延による混乱、経済危機、紛争の増加などがあるようです。

UNICEFが現状を危機的な状況と捉えていることから、Zero-dose childrenという言葉がメディアで頻出するようになっています。

 

Tarmac to arm

Tarmac to armとは「支援物資を必要としている人の手元にちゃんと届ける」という意味の表現です。

これまで援助団体などが援助物資を対象地域に届けるとき、対象地域の空港の滑走路に支援物資をおろせば、それで任務完了としてきました。

 

しかし、支援対象地域の空港まで支援物資を届けたからといって、支援物資がそれらを必要としている人々の手元に届くわけではありません。

 

援助物資をしっかりと必要としている人々の手元にまで届ける、という意味で「tarmac to arm(舗装道路から人々の手へ)」という表現が頻繁に使われるようになりました。

 

Gender food gap

Gender food gapとは女性が得られる食糧の量と男性が得られる食糧の量の違いのことです。

日常生活の中で女性が得られる食糧の量と男性が得られる食糧の量には大きな格差があることがこれまでも指摘されてきました。

 

世界の女性の多くは男性と比較して安い賃金で働かされると同時に家事をこなさなければならず貧困に苦しむ傾向にあります。

それが、近年のpolycrisisによって、貧困に苦しみ、食糧を得られない女性が劇的に増えているようです。

 

Aridification

Aridificationを一言でいうと「乾燥化」です。

しかし、近年ではより広範囲な意味で「使用可能な水の需要と供給があっていない状況」を表す言葉としても使われています。

 

たとえば今年に入ってから、大雨、洪水の被害にあった地域で旱魃が起こるということが頻繁に起こっています。

そして、状況は人が死亡するほど深刻な状況になっています。

このようなことからAridificationという言葉がメディアで頻出するようになったようです。

 

Climate resilience

Climate resilienceとは気候変動によってもたらされる影響に対する抵抗力や適応力のことです。

そして、そのclimate resilienceがどんどん低下しているのが現状です。

 

現在、世界のほとんどの土地は人間によって改変され、本来の自然に近い状態で残っている土地は30%程度と言われています。

このような土地がどんどん減少していくことで、climate resilienceは低下していきます。

 

世界の森林面積や生物の多様性は今でも縮小傾向にあり危機的状況にあるためclimate resilienceも低下傾向にあるという点から、この表現がメディアで頻出しているようです。

 

Solastalgia

Solastalgia(ソラスタルジア)は、気候変動によって生じる精神的な悲しみ、痛みを表現する言葉で、ラテン語のsolācium (慰め) とギリシャ語のalgia (痛み、苦しみ、悲しみ)が組み合わされた造語です。

 

生まれ育った家や親元を離れた時に寂しい気持ちになる「ホームシック」や、昔の思い出に浸る「ノスタルジア」に似た感情ですが、solastalgiaは特に今まであった環境が変わってしまったことによる寂しい気持ちを表現する言葉です。

 

たとえば、火山の噴火、川の氾濫、山火事などによって見慣れた景色が変わってしまった時に引き起こされる感情を表現しています。

 

Precariat

Precariatとは不安定な状態に置かれている労働者たちや仕事を得難い状態の人々のことです。

具体的にはアルバイト、契約社員、日雇い労働者、外国人労働者などのことです。

 

近年の紛争、新型コロナウィルスの蔓延、また気候変動による難民の増加などで世界的にprecariatが増えていることからメディアで頻繁に取り上げられるようになったようです。

 

Elite directed growth

Elite directed growthとは簡単にいうと社会的なエリートが彼らの視点や価値観から、あらゆることを判断して進められていく経済成長のことです。

 

貧困、気候変動、子供の食糧不足などは、社会的エリートが下す判断に従うという文化に根付いていると主張する専門家もいます。

 

つまり、社会的エリートの意思決定者は、自分たちが作成した政策の影響から隔離されているために、自分たちの政策が社会や世界に与える悪影響に気づいていないか、気にしていない、という問題をはらんでいることが指摘されています。

 

世界をより良いものにするか、このまま壊すかは社会的エリートに現状は委ねられているため、その危機感からこのような言葉が頻出するようになったようです。

 

まとめ

今回は、2023年になって海外メディアに頻出した英語表現を10個紹介しました。

このような英語表現を知ることで、世界の動き、世界が気にしている問題を知ることできます。

 

これらの表現を知っておくことで、海外メディアのコンテンツを読んだり、聞いたりすることが楽になりますし、海外の専門家やエリート層と雑談をする時にも役立つでしょう。

海外のメディアが作成するコンテンツの翻訳をする必要が生じた時には、弊社でも対応が可能ですので、ぜひご相談ください。

 

 

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