近年の地球温暖化関連のニュースを見ていると、色々な会議の名前や条約の名前が出てきます。

「OO条約」と名前がついていると、「条約だ!国家間同士の約束事だ!」などとわかりやすいのですが、必ずしもそうではありません。

 

また、いざそれらについて英語で話したり、書いたりすると、しっかりと勉強していない限り、頭が混乱したり、正しく相手に話が伝わらなかったりします。

 

今回は、ニュースで頻繁に聞く環境保全関連の条約やそれらに関係した用語5つを解説します。

企業だけではなく、あらゆる事業所において環境に配慮した活動が求められる近年、これらの5つの用語の内容をしっかりと把握しているだけで、この人は環境問題に詳しい、この人は環境に関する世界の動きに詳しいと評価されることでしょう。

 

COP

一年に一度はニュースで「COP」という言葉を聞くことでしょう。

通常、COPのうしろに18とか、20とか、28とか番号がつきます。

COPとは「Conference of the Party」の略で、これを日本語に訳すと「締約国会議」となります。

 

近年、このCOPは「国連気候変動枠組条約締約国会議」のことを指します。

COPのうしろについている番号は、何回目の会議かを示しており、2023年の11月から12月にドバイで開催されたCOPは28回目の会議だったので、「COP28」と表記されたり、呼ばれたりしていました。

 

しかし、気をつけなければいけないのは「締約国会議(COP)」は他にもあるということです。

たとえば、2010年に名古屋で開催された「COP10」は「生物多様性条約第10回締約国会議」のことで、最近騒がれているCOPとは全く別の会議なのです。

 

なので、

「最近のCOPは石油産油国が微妙な発言をしていたよね」

「そうだね。名古屋のCOP10の時はさ……」

などと発言をしてしまうと、

「こいつは何の話をしてるんだ?」

ということになってしまうので、くれぐれも気をつけてください。

 

京都議定書

COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)の話をするなら必ず知っておかなければならないのが京都議定書です。

京都議定書は英語で「Kyoto Protocol」と言います。

 

京都議定書は1997年に京都で開催されたCOP3(第3回国連気候変動枠組条約締約国会議)で合意された二酸化炭素削減量に関する国際的な約束です。その内容は、1990年と比較して2008年から2012年には年間平均5%、2013年から2020年の8年間では18%の二酸化炭素削減が約束されました。

 

そのほかに、二酸化炭素排出権取引の確立、発展途上国へのグリーン投資促進、締約国の責任を追及するための監視、審査、検証システムの確立などがありました。

今も続く、COPの基礎を築いたのが京都議定書です。

 

パリ協定

パリ協定は英語で「Paris Agreement」と言います。

パリ協定とは2015年に開催されたCOP21(第21回国連気候変動枠組条約締約国会議)で195カ国(194カ国と欧州連合)が調印した法的拘束力のある国際条約です。

 

その内容は、地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に抑えること、 目標達成に向けた進捗状況を定期的に評価すること、気候変動の緩和、気候変動への適応力強化のために開発途上国に資金提供することが合意されました。

 

パリ協定で設定された「産業革命前と比べて気温の上昇を1.5度以内に抑える」という目標に向かって、全世界が動いているのが今の状況です。

 

ラムサール条約

「ラムサール条約」を英語に訳すとなった時に、まず日本人がとっさに思い浮かべるのは「Ramsar Treaty」ではないでしょうか。

受験などで「条約はTreatyと訳す」と覚えた方が多いかと思います。

 

しかし、ラムサール条約の正しい名称は「The Ramsar Convention on Wetlands of International Importance Especially as Waterfowl Habitat」です。

通常は「Ramsar Convention」とか、「The Convention on Wetlands」と呼ばれたりします。

 

つまり、「ラムサール条約」の場合、「条約」は「Treaty」ではなく「Convention」とするのが正しいのです。

参考までに、ラムサール条約は、日本語では正式に「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といい、水鳥の生息地としての湿地を保存する国際的な取り決めです。

 

ワシントン条約

ワシントン条約といえば、日本人の中では有名な条約だと思います。

一番身近のところでは、海外旅行に行った時に、持ち帰ってはいけないものを定めたのがワシントン条約です。たとえば象牙、トラ、ヒョウ、ワニ、トカゲなどの皮で作られた製品は、このワシントン条約によって持ち帰ってはいけないことが定められています。

 

さて、このワシントン条約、英語ではなんというのでしょうか?

日本人であればついつい「Washington Treaty」と言ってしまいそうです。

しかし、「Washington Treaty」は英語話者にはまったく通じません。

 

ワシントン条約は正式には「Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora」で、これを略して「CITES(サイティース)」というのが正解です。

「Washington Treaty」と言ってしまうと、1921年にアメリカのワシントンD.C.でアメリカ、イギリス、日本、フランス、イタリアの戦艦・航空母艦等の保有の制限を取り決めたワシントン海軍軍縮条約だと誤解されてしまいますので、絶対に間違えないように気をつけてください。

 

まとめ

今回は「日本人が意外と知らない、意外と誤解している環境用語 条約編」として、環境に関連する条約や会議について解説をしました。

今回紹介した用語を正しく把握し、会話に盛り込むことで環境に詳しい人材、環境について考えることができる人材と評価も高くなることでしょう。

 

サスティナブル経営、環境に配慮した事業展開が求められている昨今において、英語で環境について語れる方は、今後必要な人材になることでしょう。

また、企業の経営方針、報告書にも環境に配慮した活動を記載することが求められています。

環境について盛り込んだ報告書、会社概要が必要になった場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 

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